日々生活している中で、心配なことや不安なことを悶々と考えてしまうこともありますよね。
私達は目の前のことに集中したいと思いながらも、「こうなったらどうしよう・・・」「これが失敗したらどうしよう・・・」など、不安や恐怖によって頭の中がいっぱいになり、時間と心を浪費していることがあります。
2013年にワシントン大学が44カ国のデータをまとめたメタ分析によれば、不安障害を患う人の数は全世界で13人に1人もの割合に達するとのこと。
人生の何処かで不安障害に苦しんだ人の数までカウントすると、発症率は3人に1人にまで跳ね上がります。
日本でも不安障害の数は増え続けており、2011年の厚労省の調べでは不安障害の治療を受けている患者の数はおよそ157万人。
この数字は1996年のデータの約二倍となります。
まさに現代は「不安の時代」なのです。
※こちらの記事は前回からの連載です。前回の記事はこちら↓
97%の心配事は取り越し苦労
そんな誰しもが持っている不安ですが、実際には私たちの不安は果たして、どのくらい的中するのでしょうか。
アメリカの認知行動療法の専門家であるロバート・L・リーヒ博士の研究によると、アメリカ人の約38%の人が、毎日のように不安を感じているとのこと。
更に、リーヒ博士は実験の参加者に、何が心配なのか、そして、この先何が起こると思っているかについて、2週間、頭に浮かんだことを記録してもらいました。
その上で、「記録してもらった心配事」と「実際に起きたこと」を分析した結果、心配事の85%に対して、実際には「良いこと」が起き、さらには、悪いことが起きた残りの15%の場合でも、そのうちの79%は、予想よりも良い結果につながっていることが明らかになりました。
これらを計算すると、実に、97%の心配事は取り越し苦労だったのです。
楽観的に考えられる性格の人には、あまり参考にならない研究結果かもしれませんが、何をやるにも心配な人、日頃から漠然とした不安を感じやすい人には、とても勇気づけられる研究結果ですね。
不安や心配は脳のワーキングメモリを浪費する
不安はさほど的中しないとはいえ、慢性的に不安に襲われるのが現代というもの。
その不安に毎度毎度振り回されていては、自分の夢や目標を達成することはできません。
たとえば、人前でのプレゼンや大事な試験の直前に不安な気持ちに襲われると、脳のワーキングメモリに悪影響を与えることが明らかになっています。
※ワーキングメモリとは、脳の前頭前野の働きの1つで、作業や動作に必要な情報を一時的に記憶し処理するシステム
不安や心配は、ワーキングメモリの容量をいっぱいにしてしまうため、高いパフォーマンスを発揮するために必要なワーキングメモリの容量がなくなってしまうのです。そのようなときには、クリエイティビティもまったく期待できません。
不安を書き出そう
それでは、いざ不安に襲われたときには、私達はどうしたら良いのでしょうか。
「そんな簡単に不安や心配を対処できないよ」
「起こってもない未来の不安を消し去ることなんてできない」
という声が聞こえてきそうです。
しかし、だれでも、簡単にできる不安の対処法があります。それは「書き出す」ということです。
アメリカのシカゴ大学心理学部の実験では、全員同じ数学のテストを受けてもらいスコアを比較する実験を行いました。
実験では参加者は2人組のチームに分けられ、
・チーム成績が優秀であれば賞金がもらえること
・試験の様子は評価のため録画されること
が全員に伝えられました。つまり、非常に緊張する環境が用意されたわけです。
自分が失敗するとチームメンバーに迷惑がかかること、さらには自分の様子が録画されそれが評価につながることを考えると、なかなかの緊張ですね。
不安も大きいものだったでしょう。
その環境下を作りながら、参加者を2つのグループに分け、1つのグループは、試験直前の10分間、そのとき感じている不安を書き出すように、もう1つのグループは、同じ10分間、何もしないで待つように指示しました。
結果は、不安を書き出したグループのほうが、何もしないで待っていたグループよりも、6%も試験のスコアが高かったのです。これは、不安を書き出すことで、ワーキングメモリが解放され、高いパフォーマンスが発揮されたと考えられます。
逆を言うと、不安を抱え込んだままだといかに脳パフォーマンスに悪影響を当たるかを示した研究例でしょう。
書き出すという作業なら、場所や時間も特殊な環境を必要とせず、緊張するイベントの直前でもできそうですね。
ちなみに紙だと難しい場合は、スマホやパソコンに入力するだけでも有効です。
不安になりやすい、先々の心配事をしてしまう、という方は是非書き出す習慣を取り入れてみてくださいね!
脳パフォーマンスやクリエイティビティを引き上げたい方は以下の書籍がおすすめですので是非読んでみてください♪