「走れば脳は強くなる」(著:重森健太)より
デュアルタスク・トレーニング
集中力は、主に前頭葉を鍛えることで高められます。
前頭葉は継続してランニングすることでも鍛えられますが、より効果的な方法として「デュアルタスク・トレーニング」をご紹介します。
「デュアルタスク」とは、2つのことを同時に行う「ながら動作」のことです。例えば「外を歩きながら会話をする」というのもその1つで、実は日常生活の中でも様々な場面で自然と行っていることでもあります。
ながら動作で脳を活性化
ながら動作を行うと、前頭葉のワーキングメモリー(おでこの端っこの部分)が活性化されます。
エスポジト博士の研究では、単一作業を行っているときに比べて、ながら作業を行っているときの方が、この部分がより優位に活性されると観察されています。
前頭葉は脳の司令塔とも言われる要の部分で、運動を行う機能と思考を司る脳の最高中枢です。
ここの動きが悪くなると、状況判断力の低下など、あらゆる面で悪影響を及ぼします。逆に言うと、デュアルタスクで刺激を与え続けることが全体的な脳機能の向上に繋がるのです。
ひとりじゃんけんランで前頭葉を鍛えよう
簡単に前頭葉を鍛える方法として「ひとりじゃんけんラン」をご紹介します。
「ひとりじゃんけん」とは、文字通り両手を使ってひとりでやるじゃんけんのことです。毎回必ず勝負がつくようにグー・チョキ・パーを出すので、本来単体でも結構な集中力が必要になります。
この難しい作業を走りながら行うことで集中力を分散させ、より複雑な作業にするというのがトレーニングのミソです。前頭葉を鍛える上では、この「複雑化」が最も重要なのです。
STEP1:基本動作
①走りながら腕を前に振る際にじゃんけんをする。まず、「前に出す手」でグー・チョキ・パーのいずれかを出す。
②次に、反対(後ろ)の手で①に対して「負ける手」を出す。
③ジョギングをしながら、この一連の動きを続ける。
基本動作に慣れて、もっと前頭葉に刺激を与えたいという人は、次のSTEP2のトレーニングを試してみて下さい。
やることは同じですが、3回ごとに「勝つ」「負ける」を切り替えることで、動作をより複雑にしています。
STEP2:応用編
①ジョギングをしながら、基本動作と同じように「前に出したグー・チョキ・パー」を「勝つ手」、「反対(後ろ)の手」を「負ける手」としてジョギングをしながら3回実施する。
②次に、「前に出す手」を「負ける手」、「反対(後ろ)」は「勝つ手」にして3回実施する。
今回は、ひとりじゃんけんとランニングの合わせ技を紹介しましたが、ウォーキングや階段の昇り降りをする際にも応用できます。
また、休憩中や外出中のすきま時間でも行えるます。ぜひ、普段の動きにひとりじゃんけんを加えてみてください。
集中力をキープする
人間の集中力はもって1時間~90分。ずっとひとつのことに集中し続けるのは不可能です。それは同じ刺激を与えていても次第に反応しなくなってくるという脳の基本原則と関係しているので、「この仕事が終るまでは休まず頑張ろう」というような根性論は、かえって非効率と言えるでしょう。
休憩も必要
高いパフォーマンスを維持するためには、ところどころで休憩を入れ、脳を休ませてあげる必要があるわけです。脳を上手に休ませるには、とにかく行動や思考を変えることがポイントとなります。20分~30分の時間が取れるのであれば、外に出て走ったり歩いたりするのがベストですが、そうもいかないという場合には、次の歩き方を試してみて下さい。
集中力をキープするお手軽エクササイズ
①継足歩行
床の縫い目や、切り替えを利用して、ある直線上を右足、左足、というように交互にゆっくりと歩きます。つま先とかかとはくっつけて歩きましょう。片足ずつ、しっかりと重心をかけながら、真っ直ぐ直線を外れないようにして下さい。
②後ろ歩き・後ろ走り
文字通り、後ろに歩いてください。自分の歩幅で後ろ向きに進みます。バランスを崩さないように、でもなるべく速く足を運びましょう。これがサクサクできる人は、ワンランクアップで後ろ走りをおすすめします。
脳のモードを切り替える
どちらも普段は行わない動きなので、思いのほか気を遣います。それまでとは違った作業にある種集中することで、脳のモードが切り替わります。
すると、また同じ作業に戻っても、新鮮に取り組むことが出来るのです。どうしても動けないときには、できるだけ関係のないことを考えたり、ノートに落書きをして右脳的な刺激を与えるようにしてください。
集中力を鍛えて高パフォーマンスを目指す
集中力を鍛えるデュアルタスクのトレーニング方法と、集中力をキープする方法をご紹介しました。
どれも日常生活に無理なく取り入れることが出来る方法ばかりです。ちょっとした時間にトレーニングを取り入れて、前頭葉を鍛えましょう。そして、定期的に休憩を上手に取り入れて、高いパフォーマンスを維持しましょう。
「走れば脳は強くなる」(著・重森健太)より
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