「走れば脳は強くなる」(著:重森健太)より
「運動強度」がモノを言う
走るとき、スピードを意識していますか?とにかく距離をかせげばいいと、適当なペースで走っていないでしょうか。
走って脳細胞を増やし、脳機能を全体的に高めるためには、適切な基準があります。それは自分にとって適度な速さをキープし続けることが大切です。
その時の気分でのんびり走ったり、逆にむやみにスピードを上げすぎてしまっては、せっかくの脳への効果が半減してしまいます。
運動強度がポイント
では、自分に合った速さを見つけるにはどうしたらいいのか。ポイントとなるのは「運動強度」です。運動強度とは、走っているときに体にどれくらいの負荷がかかっているのかを、脈拍などを元に数値化したもの。
例えば同じ距離を走るにしても、スピードの早い遅い、坂道か平坦な道かによって脳や体が受ける刺激はまったく違います。運動強度を何パーセントに設定するのかで、得られる効果も変わってくるのです。
走りながら脳を強くする法則
脳を効果的に鍛えるためには、この運動強度を意識することが非常に重要です。具体的には
【運動強度60~80%のランニングを1日20分~30分×週3回×3ヶ月】
という基準で行うのが最も効果的です。「なぜ?」と思った方のために、裏づけとなる実験結果の一部をご紹介しましょう。
有酸素運動でアルツハイマー病に改善効果が
イギリスのケンブリッジ大学のキャロル・ブレイン博士の研究によれば、運動不足はアルツハイマー病の22%に影響し、1週間に3回、20分~30分間の有酸素運動で改善効果が現れるとしています。
また、2015年に発表されたアメリカの研究「ランナーとウォーカーの健康調査(National Runners, and Walkers and Walkers, Health Study)」による報告では、アルツハイマー病予防に効果のある運動のひとつとして、毎週75分間のランニング(週3回に分けると一日25分)が挙げられています。
他にも、「1日40分の有酸素運動を週3日実施で海馬が大きくなった」とか「15分以上のジョギングを週3日行うことでアルツハイマー病の発症を予防できる」といった報告もあります。
脳を鍛えるポイントは運動強度の設定にあり
実験する上での細かな設定は異なるものの、これらを総合的に捉えると、先ほどの基準【運動強度60~80%のランニングを1日20分~30分×週3回×3ヶ月】を行うのが、脳に刺激を与える最低ラインと言えるのです。
たまに、ぜえぜえと息が上がるほどの猛スピードで走っている人をみることがありますが、脳細胞を増やし、脳機能を高めたいのであれば、もうすこしスピードを落とし強度を低くする必要があります。
ただやみくもに適当なペースで走るのではなく、運動強度を意識する。これが脳を鍛える走り方の基本です。
ウェアラブル・ツールで簡単強度設定
現在の市場ではウェアラブルデバイスはリストバンド型が主流です。1日を通して手首に装着することで、移動距離や歩数、睡眠時間、消費カロリーなど様々な身体活動のデータを計算できるので、健康管理としても使える便利な代物です。
市販されている活動量計には加速度センサーが組み込まれていて、このセンサーにより、ありとあらゆるデータが計測できるわけですが、近頃は加速度センサーに加えて心拍計(脈拍計)が内蔵されている製品が多く出てきています。2つのセンサーを使うため制度が高くなるというメリットに加え、心拍系から運動強度がわかるようになります。
デバイスを使って脳を鍛える
「走れば脳は強くなる」の著者である重森健太さんが愛用している製品はPolar(ポラール)社の活動量計「Loop」と、GPSウォッチ「V800」の2種類。これらは、重森さんが運動や睡眠を管理するのを助けてくれるそうです。
活動量計「Loop」は日々の生活スタイルを見直すときに活用できます。普段から運動をする習慣を持っていない人は、いきなり毎日ハードなトレーニングはできないですよね。
そんな時はまず活動量計を腕につけ、1週間ほど毎日の運動量を可視化するところから始めるのがいいでしょう。
運動量を見てみる
そして、本格的に運動したい時にはGPSウォッチ「V800」が活用できます。日々の歩数などを記録してくれる活動量計に加えて、専用のセッションを記録するモードが用意されており、アクティビティの様子を詳細に記録し、後から振り返ることができるようになります。
例えば「ランニング」のセッションを開始すると、開始時刻、スタート地点などの情報が記録され、その後どんなルートを通ったか、高度はどれくらいだったか、スピードはどれぐらいだったか、といったデータが自動保存されます。
デバイスでモチベーションアップ
GPSを内蔵しているため、跡で走行ルートを地図上に表示することも可能です。もちろんこうしたアイテムがなくても、脈を測ったり、自分で地図を調べたりすれば適切な強度設定は可能です。
しかし、これらを使うと自動的にリアルタイムで経時的変化をとらえることができるので、お手軽かつ運動に対するモチベーションが高まるという利点もあります。
自分に合った強度設定が簡単に出来るデバイスを使って、脳を鍛えましょう。
「走れば脳は強くなる」(著・重森健太)より
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