世界中をめぐる著者が、現地の健康&食べもの情報を毎週お届けします。
アフリカの南部、ボツワナ共和国のマウンという町にいます。
ひと月900US$で、川沿いの一軒家を借りました。
トイレ・シャワールームだけで、8畳の広さ。
無駄に広いトイレというものは、便秘になる暇がないほど快適です。
借景を流れる川は、雨季ともなるとカバの散歩コース。
雨が降るのは、来月12月。
裏庭から川まで数メートルもないので、踏み殺されても文句の言えない間合いで、生カバに逢えます。
5週間ほど、カバの張り込みをします。
川のゆったりとした流れを眺めていると、筆者の大腸右側の大きく曲がった肝臓の下あたりが疼きます。
怪我とも言えぬ旅の古傷は、南米はコロンビアの事件です。
舞台はその昔、世界一危険だと恐れられた麻薬の町メデジン。
宿でくつろいでいたところ、なにやらじわじわとカラダが痛くなってきました。
脇腹から肝臓にかけて、爪でこちょこちょと内臓を引っかくような擦過痛。
痛くて死ぬってほどじゃないけれど、歯の痛みに似たイライラする感じです。
足の小指の先を家具にぶつけた痛みに比べると屁の河童レベルですが、初めて経験する種類の痛み。
お腹を下すとか、そっち系とは関係ありません。
しばらくは我慢していたものの、痛みは一向に去る様子はなく、放置したら一生付き合わなければならないようなヤバさ感が積もり積もって、タクシーを飛ばして救急病院へ駆け込みました。
100US$もの特急治療代を払わされたわりにはさんざん待たされ、待合室でうめき声を止められなくなったころ、ベッドへ。
どれどれと医者が触診を始めたら、あら不思議、痛みがないのです。
「ここですか?」と指で押されても、はて、どこでしょう?
どんな痛みですか?と訊かれても、過ぎ去った痛みをどう説明したら良いのか、しかもスペイン語だし
「痛くなったらきてくださいねー」
と笑顔で追い出されました。
翌日、再び痛み出します。
痛みがなくなりませんようにと不本意な祈りを捧げながら、タクシー。
今日も100US$の特急料金を払わされ、空いていたのかすぐに診察。点滴。そして投薬。
現代医療とはすごいもので、痛みはあっという間に消え去りました。
犯人は、寄生虫。
どこでいったい寄生虫に罹ったんだって考える暇もないくらい、ピンポーン!心当たりがあります。
先週食べた、宿の連中とのシェア飯。
アマゾンの川の魚で、ちらし寿司。
「川魚で寿司はまずいんじゃない?」
調理担当の釣りキチK君に尋ねたら、
「大丈夫っしょ」
彼の根拠のない自身ははずれ、筆者の不安は的中。
8人で食べたちらし寿司は、筆者にだけあたったのです。
もしコロンビアちらし寿司事件が迷宮入りし、いまでも寄生虫を飼っていたとしたら、180度とは言わないまでも、90度くらいは人生が変わっていたかもしれません。
お腹の贅肉がなくなり、花粉症が治り、ちょい悪オヤジとしてモテていた可能性も無きにしも非ずです。
その理由は、サナダ虫ダイエットです。
サナダ虫ダイエットとは、生きたサナダ虫をお腹で飼い、余分な栄養素を食べてもらう作戦です。
食べても食べてもサナダ虫が消化してくれるので、太らないという理屈。
ついでにアレルギーと花粉症まで治す、一石二鳥のダイエット。
英国のヴィクトリア女王まで遡る、古典的手法です。
ソプラノ歌手のマリア・カラスが50kgも体重を落としたという宣伝文句ですが、それはネット怪説。
彼女の夫によると「サナダ虫を出した後」に痩せています。
日本では、サナダ虫に身を捧げてン十年の藤田紘一郎先生が、御大自ら6匹に挑戦。
花粉症をはねのけ、中性脂肪を減少。
効果あり!
そんじゃあ私もサナダ虫行かせてもらいます!って、さっそく薬局に走り出すせっかちおデブさん。
ちょっと待てクダサイ!
サナダ虫はどうだかわかりませんが、我輩の経験では、寄生虫の痛みはそうとう不愉快なものです。
救急車を呼ぶほどではないにしろ、隣で幸せそうな顔をしている人がいたら、刺したくなる殺傷力。
痛みもさることながら、脳とかシャレにならない部位を攻める奴もいるので、人生をかけたダイエットになります。
紹介しておきながら反対しますが、サナダ虫ダイエットは問題ありです。
経験したことのない不愉快な痛みに悶絶し、緊急治療費を2度も払った寄生虫騒動。
もう2度と生の川魚は食うものかって誓ったものです。
が、しかしその後、アルゼンチンで湖で釣り上げたマスを握り寿司で食ってしまい、心から反省しています。
痛みませんが、潜伏期間かもしれません。
デザイナー。1965年、北海道旭川市生まれ。札幌で育ち、東京で大人になる。出版社勤務、デザイン事務所、編集プロダクションなど複数の会社経営の後、2005年4月より建築家の妻と夫婦で世界一周中。生活費を稼ぎながら旅を続ける、ワーキング・パッカー。世界中の生の健康トレンド情報をビジネスライフで連載中。