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「わかった?」「大丈夫?」はNG? ダメ上司がやりがち「無意味な問いかけ」とは

「部下にやる気がない。もっと自分から動いて欲しい」 「うつうつとしている部下が心配だが、どう接すればいいのかわからない」……

部下のマネジメントを引き受ける管理職には、こんな悩みがつきものです。この状態を放置しておくと、職場環境の劣化を招くことも。 産業医の三宅琢氏によれば、マネジメントのコツは「部下に教えるのではなく、教わりに行く」ことにあるのだとか。三宅氏の著書『マネジメントはがんばらないほどうまくいく 』から、健康経営の実践にも役立つ、部下が主体的に仕事を受け止められるようになるマネジメント方法をお伝えします。

部下のやる気は上司次第

部下のモチベーションを高めたい、元気に仕事をしてほしい、自分から主体的に動いてほしい、失敗してもめげずに前に向かって進んでほしい-。

これは、上司としては当然、願っていることでしょう。

ですが、蒔かぬ種は生えぬ、とも言いますよね。部下のモチベーションを高く保つためには、上司はまず種蒔きをしなければならないのです。

「そこまでしなくても」「面倒だ」「大変だ」と種蒔きをせずに、部下が勝手にモチベーションを高めてくれるのを期待しているとすれば、おそらく、上司としての仕事はより大変になっていくことでしょう。

きちんと初期投資をしなければ、成長はありません。ビジネスの基本です。みなさんは、自分の部署に成長のための投資をしていますか? きちんと投資をすれば、結果的に、みなさんがラクになるのです。

「飲みニケーション」は有効か?

そこで、「じゃあ、景気づけに一杯、飲みに行くか!」と飲み会で交流を図り、モチベーションを高めようとする方も多いのですが、ちょっと待ってください。

飲み会はどの程度のリターンが得られる投資になるか、考えてみたことはありますか? 

私たちは、ときどき自分の気が済む行動、気持ちいい行動に頼りがちです。飲み会を開くことで、モチベーションが上がり、上司の仕事が減るのなら有効な方法でしょう。かつてそんな時代もあったかもしれないと思いつつ、どの職場でもこれが有効とは限りません。

「教える」のではなく「教わりに行く」

職場の劣化を防ぐには、当事者ときちんと向き合うマネジメントが求められます。

「向き合うと言っても、どうしていいかわからない」と思う方も多いでしょう。難しく考える必要はありません。わからないなら、教えてもらえばいいのです。

わからないことを、わからないままにしておくことは、厳しく言えば職務怠慢です。「部下をどうしていいかわからない」と嘆く前に、当人に教えてもらいに行くべきでしょう。

みなさんの部下がどうしたらミスをしなくなるのか、どうしたらモチベーションが高まるのか、産業医である私に聞かれてもわかるはずがありません。誰に聞いてもわからないでしょう。わかるのは、当人だけ。当人に聞くのが最初の一歩であるべきです。

このときに、上から目線で接していると、なかなか話が進みません。「教わりに来た」という下からの姿勢でのぞむことです。

私自身、たくさんの人と面談をしていますが、決めてかかることはしません。若い人はこう、中高年はこう、上司はこう、経営者はこういう傾向があるといったざ っくりとした対応のコツのようなものはあるかもしれません。でも、やっぱり対話をしながら、相手の話をよく聞いてみないことにはわからないのです。

「指示」ではなく「選択肢」を与える

指示をする上司、それに応える部下。シンプルでわかりやすいですが、モチベーションを高めることにはつながりにくいでしょう。

よほど敬愛する上司からの指示なら、それに応えるだけでもうれしい、と感じる人もいるかもしれません。ですが、そういう人は少ないでしょうし、その人は何も考えず、指示が来るのをただ待っていることになってしまいます。

多くの企業では、 そういう社員を求めていません。自分の考えを持ち、判断でき、高いモチベーションで取り組んでくれる社員を増やしたいと思っているでしょう。

「指示だけ」も「すべて放任」もダメ

確かに、過去には上司は、「上手に指示を出して従わせる」ことが求められていたかもしれませんが、それだけではもはやマネジメントのできるいい上司とは呼ばれなくなってきました。

裁量権を与え、自分事として主体的に仕事を受け止めるためには、指示よりも「選択肢」を示し、そこから選んでもらう方がいいのです。

上司は、部下の仕事について責任を持ちます。部下のやりたいように放任してしまうと、それもマネジメントとは呼べません。部下がそのあげく過労で倒れたとしても「知らない」では済まない話です。

選択肢は、そのどれもが、上司として責任を持って部下にやってほしい内容に絞り、部下が自分の意思で選んだことを意識させることが大切です。自分で決めたことを遂行していくのですから、主体性を持ちやすく、モチベーションは自然に高まります。

「大丈夫?」「わかった?」というセリフは 果てしなく無意味

上司として、部下に声をかけていきたいからと「大丈夫?」「わかった?」といった、ほとんど意味のない言葉で満足している人もいます。

「大丈夫?」と聞かれても、正直に答える人ばかりではありません。もし「自分の部下は、全員自分には正直で心を開いてくれている」と思っているとしても、そう思っているのはご自身だけだった、となりかねません。 人の心の中は、確かめようがないのです。

「大丈夫?」と声をかけ、「大丈夫です」 と返事がきても「ダメです」と返事がきても、それだけでは、どっちも本当の気持ちかどうかはわかりません。

部下を信頼するためには「確認作業」が必要

ダメなのに、ムリをして「大丈夫」と返事をする人もいます。やってやれなくもないけど、ラクがしたいので「ダメです」と返事をする人もいます。

「部下が信じられなくなっちゃいますよ!」とおっしゃるかもしれません。 では、ご自分の心はどうでしょう? いつも同じようにしていられるでしょうか。昨日は信じることができた相手を、今日は何かちょっとしたことから、信じられなくなるかもしれないのです。ずっと変わらない、と保証できるものではありません。

つまり、職場では、部下を信じられるか信じられないかを考えるよりも、部下に信頼して仕事を任せるために、しっかりと確認作業をすることが必要です。

確認のコツ「自分の言葉で言ってみて」

無意味な問いかけはやめて、当人に当人の言葉で言語化してもらうことが、仕事の上では最善の確認作業でしょう。


×「わかった?」

〇「自分の言葉で言ってみて」


×「大丈夫?」

〇「いま、私(上司)としては、……ということだと認識したけど、他に言い忘れたことある? 伝えきれていないところはある?」


言い方はいろいろあるでしょうが、とにかく、その人に考えてもらい、言葉にしてもらわなければ、確認したくてもできないのです。 その上で、あなたが思っていたのと違う点があれば、それについて再度、話をするべきでしょう。


「じゃあ、いま話し合って決めたプロジェクトAの進め方について、自分の言葉で言ってみて」

「はい。2週間後ぐらいまでに、3つの案件をまとめて報告します」

「あれ、僕はもう少し早く報告もらうつもりだったけど。それに、まとめてじゃなくてもいいんだよ」

「あ、そうですか。じゃ、来週から、わかった案件から随時、報告します」

「はい。それで、お願いします」


このように、はっきりさせていかなければ、お互いにちゃんと理解しているかどうかが確認できません。 私も面談では「まとめ」を大事にしていますが、そこでどういう話が出たのかは、お互いにしっかり共有しなければ、あなたの言いたいことがちゃんと伝わったのか、確認のしようがありません。

職場での上司としての声掛けにおいて「わかった?」「はい」では、まったく不十分なのです。

 


 

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