『明日に疲れを持ち越さないプロフェッショナルの仕事術』(著:渡部卓)より
ストレスに「強い人」・「弱い人」の特徴とは?
あなたはストレスに強い人でしょうか。それとも弱い人でしょうか。
ストレスに強い人と弱い人には根本的な違いがあります。一体何が違うのでしょうか。
・ストレスに強い人の特徴
ストレスに強い人とは、極端に言えば、「あきらめと前向き姿勢のバランスのよい人」です。
ストレスを多面的に捉えられる余裕のある人と言い換えてもいいでしょう。
・ストレスに弱い人の特徴
ストレスに弱い人とは、「物事の悪い面にばかり注目している人」です。
ストレス耐性とは、外的な刺激や出来事に対する、受け止め方の違いで変わってきます。
つまり、認知の問題なのです!!
そしてこのストレス耐性は、後天的に鍛えられるものでもあります。
ストレスを回避するABCDE理論とは?
ストレスを回避する認知の修正方法である「ABCDE理論」をご紹介します。
これはアメリカの高名なカウンセラーで臨床心理の権威であるアルバート・エリス博士が提唱したものです。
A=Activating Event (出来事や外部からの刺激)
B=Belief (認知、解釈、受け止め方)
C=Consequence (結果)
D=Dispute (反論、もしくは「Dialogue」で自問自答)
E=Effect (効果や影響)
上記が「ABCDE理論」になります。
ストレスになるかどうかは認知(Belief)で決まるんです!
Aの出来事は現実に起きた事実です。これは事実ですから変えようがありません。
この事実が、ストレスと感じるかどうかは、Bの受け止め方次第であり、これは自分で変えることができます。
事実は変えようがないけれど、認知は変えることができると覚えておいてください。
そして、この認知(Belief)を変えることによって、Cの結果が変わってきます。
具体的な例を下記で説明します。
A=上司に報告書の不備を指摘される
B=「上司はいつも些細なミスばかり指摘する。自分に対して悪意があるのではないか」
C=上司に対する怒りが湧く
このケースでは、上司が自分に対して悪意を持っていると認知していることで、上司の指摘をストレスと感じ、怒りに転化しています。例えばこの認知を、「自分に対して特別に目をかけているので、厳しい態度になっている」と受け止め方を変えれば、Cは単に怒るのではなく、反省するとか上司に仕事のやり方を教わるとか、違う結果になるでしょう。
人それぞれ、B(受け止め方)には癖があります。他人の言動や周囲の出来事を常に自分に対する悪意や攻撃と否定的に受けとめていれば、ストレスは増すばかりです。
B(受け止め方)の癖を修正するために、DやEのプロセスがあります。
ネガティブな感情が沸いたことに気づいたら、
「上司は常に自分に対してミスを指摘してばかりだろうか。上司が自分に対して褒めてくれたり、優しい言葉をかけてくれたことはなかっただろうか」など心の中でD(反論、自問自答)をしてみます。
自分の最初の感じ方に反論することで、
「企画書やプレゼン資料の作成では、ずいぶん評価してもらった。なぜ報告書に関してはシビアに指摘するのだろうか。一度、真意をしっかり聞いてみよう」という受け止め方も出てきます。
D(反論、自問自答)により、最初のネガティブな感情は、前向きな考え方に変わります。これがE(効果)です。
ポジティブシンキングは長続きしない?
「ABCDE理論」はともすると、精神論やポジティブ思考ですべて解決できるという結論に陥りがちですが、そうではありません。
精神的なストレスに対して、見ないふりをする、無視するというスタンスをとる人は、仮にその場は乗り切れても、実は内面で傷を負っています。平気な顔をしていても実際はうつの状態になる、仮面うつと呼ばれる症状がそうです。大丈夫なようにふるまうので、心を通り越して体の不調になって現れます。
ネガティブな要素を打ち消して、すべてのことに感謝しようというのがポジティブシンキングですが、それは長続きしません。
「ABCDE理論」のポイントは、ネガティブからポジティブに反転するのではなく、反論や自問自手答によって、それまでリニア(一直線)だった自分の受け止め方を、複数で思い巡らせるように癖をつけることです。
例えば、のどが渇いているときに、目の前のコップには半分の水しかないとします。
ネガティブシンキングでは、「半分しかない」とがっかりします。逆にポジティブシンキングでは、「半分もある、うれしい」と感謝します。
多面的に見る癖がついている人は、自分の喉の渇きからすると、本当はもっと欲しい、しかし今の状況では半分でも我慢するしかない。「ないよりはましだが残念でもある」と考えることができます。
前向きに、あきらめることも大切ですよ!
残念な出来事を無理にポジティブに捉える必要はありません。
先の上司の例は、確かにポジティブな捉え直しをすることで効果があります。
ですが、どう捉えてもポジティブになれないときは、「あきらめつつ、前向きに」受け止めましょう。
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