『明日に疲れを持ち越さないプロフェッショナルの仕事術』(著:渡部卓)より
あなたは、仕事を抱え込んで離さないタイプの人ではないですか?
まじめで責任感が強いためなのかもしれませんが、ちょっと待ってください。
その抱え込み、実は百害あって一利なしの残念な結果になっているかもしれません。
ひとりで抱え込まず、思い切って手放したほうが、現場がうまく回っていくことは多いのです。
任せる勇気を持とう
まじめな人ほど大量の仕事を抱え込み、その仕事の量に押しつぶされそうになって、慢性的なストレスを感じています。
特に管理職に多く見られる事例ですが、本人だけの問題にとどまらず、社内的にも困ったことになっています。
部下を育てるためには仕事を任せ、経験を積ませることが必要です。
しかし、部下に仕事を振るのは面倒で手間が掛かる上、自分がやった方が早くて確実なのは間違いありません。
そこで、ついつい自分ひとりで抱え込んでしまいがちになるのです。
いつも目先の仕事に埋没して忙しい上司と、ちっとも成長できないままの部下というのは、会社にとっても大きな損失ですね。
ここは、勇気を持って「任せる決断」をしなくてはなりません。
参考にしたい山本五十六の部下指導法
部下の育て方については、次に挙げる山本五十六の有名な一説が参考になります。
「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ」
ステップを説明すると
1 まず手本を示す
仕事は見て盗むもの…かつて新人だった頃、上司や先輩からからこんなふうに言われたかもしれませんが、それでは指導になっていません。きちんと手本を示して教えなければ駄目です。
2 それが必要な理由を説明する
「なんでそんなことする必要があるのか」を納得しているかそうでないかは、結果に大きな違いを生むものです。納得してこそ、気合を入れて取り組めるものです。
3 実際にやらせてみる
本当にわかっているのかどうかは、実際にやらせてみて初めてわかるものです。とんでもない誤解や曲解をしていたら、後で大変なことになります。二度手間にならないようにするためにも、急がば回れで、確認を怠らないようにしたいものです。
4 よいところをほめる
誰でもほめられるとうれしいものです。自分をきちんと認めてくれる上司に対しては、信頼感と好感を持つようになります。嫌いな人の言うことを聞きたくないと思うのは、仕事上あってはならないことですが、人情としては理解できるものです。
なんと面倒な…と思われたかもしれません。
そんな甘やかしたことを…と怒りを感じた方も、もしかしたらおられるかもしれませんね。
しかし。ここまでやってこそ初めて人は動くものなのです。
以上のステップをしっかり踏んでいけば、思った以上にすんなりと事は進むものです。
ほかにも、山本五十六の言葉を紹介します。
「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず」
「やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」
大切なのは、部下を「尊重して」「理解に努め」「信頼し」「ねぎらう」ことです。
あの山本五十六も、苦労して部下を指導していたのですね。
できる人ほど、他の人に任せられる
何でも自分ひとりでできる人はいません。
また、できないことがある人が「できない人」というわけでもありません。
まず、自分の「できること」と「できないこと」を、シビアに客観視しましょう。
そして、自分のできないことは、よくできる人に任せてみるのです。
各分野のエキスパートを把握していて、その人の力を借りることができることこそが、「できる人」の仕事術なのです。
優秀な人を選抜し、その力を集結することができれば、仕事のスピードと精度は上がってゆきます。
時間のムダをなくし、社内資源をフル活用することで、より一層の成果を上げることができるのです。
これこそが、管理職に求められるスキルではないでしょうか。
「ブラックボックス」化している!抱え込む人
また、一人の人が仕事を抱え込んでいると、周囲から仕事の流れが見えなくなることがよくあります。
最悪なのが、悪い情報を抱え込んでしまい、どうにもならなくなってから明るみにでるケース。
もっと早くにわかっていれば、打つ手はいくらでもあったはずなのに…。
こんなケースではたいてい「時すでに遅し」で、損失も多大なものになってしまっています。
抱え込みによる多大な損害ですね。
悪い情報ほど早く公開すべきなのですが、日本人と中国人は、これが苦手なようです。
減点主義や、体面重視の思考習慣が、問題をオープンにすることを妨げているのです。
「報告・連絡・相談」を個人の努力目標としていては、なかなか機能しません。もっとシステマティックな仕組みを考えなければなりません。
「報告・連絡・相談」をシステマティックに行う意外な方法とは?
社内連絡にメールを使うのは今や常識となっていますが、全ての問題をメールで解決しようとしていませんか?
特にトラブルが発生したときには、メールでやり取りを続けると問題がこじれてしまい、どんどんややこしくなっていくものです。
多くの場合、メールの文面は言葉足らずです。
・何が原因なのか
・どういう状況なのか
・誰に責任があるのか
・相手はどう考えているのか
など、詳しいことが伝わらず、受け手はあれこれと悩むことになりがちです。
また、文面だけを捉えるしかないため、言葉の揚げ足取りが始まり、人間関係のこじれにまで発展してしまうことにもなりかねません。
こんな時には、直接話し合うのが一番です。
顔を合わせて対話することで、逐一細かな点のすり合わせが可能となり、誤解や曲解を避けることができるのです。
相手の表情や声のトーンから、言葉だけでは汲み取れないホンネを読み取ることもできます。
直接話し合う機会を定期的に持つことで、「報告・連絡・相談」をシステマティックに行えるようになり、問題の共有と早期解決が可能となるのです。
できる人は抱え込まずに手放す達人
抱え込みを手放すには、自己開示と歩み寄る態度が必要です。
孤高を守っていないで、より多くの人達との関係を構築することです。
まず思い切って自分をオープンにする、それによって相手もこちらに対してオープンになり、風通しの良い人間関係を築くことができるようになるのです。
そうなってこそ、部下は育ち、トラブルを未然に防げるようになっていきます。
ストレス知らずで明日に疲れを持ち越さない、プロフェッショナルの仕事術へのヒントがここにあるのです。
関連書籍のご案内
記事の内容をさらに知りたい方はこちらの本をお読みください。