「顎がゆるめば、不調は改善される」(著: 滝澤聡明)より
歯の不調は自分の行動を振り返るチャンス
歯が痛いから、歯ぐきから出血があるから、歯医者へ行って悪い部分を治療してもらう。ごく当たり前のことですが、いま痛みのある歯や腫れた歯ぐきを治療したところで、果たしてそれは根本的な解決になっているのでしょうか?
もし、歯を治療してもなんだか調子が悪い、スッキリしないと感じていたら……木を見て森を見ず。歯の不調にばかり囚われていて、実は自分の身体に起こっている本当の問題に気づけていないのかもしれません。
逆に言えば、歯の不調に気づいたときは、自分の行動を振り返るいいチャンスでもあるのです。
歯の調子が悪いなと思ったら、まずは最近の自分の行動や体調を思い返してみてみましょう。仕事が忙しくて寝不足だったり、疲労が溜まっていたりしませんか? お風呂に入るのも面倒で、歯も磨かずに寝てしまう日が続いていないでしょうか?
疲労が蓄積されると無気力になり、やらなければいけないことも後回しにしてしまいがちです。その疲れが直接歯への負担になっているのかもしれません。
歯の痛みと他の病気は連動する
さらにチェックしたいのが、歯が痛むのに連動して、他の病気が出ていないかどうかです。歯が痛むときは決まって熱が出る、風邪をひきやすくなる、頭痛がする……卵が先か、鶏が先か、ではないですが、果たして体調が悪いから歯が痛むのか、歯が痛むから他の場所まで悪くなるのか、どちらを先に治すべきかは判断する必要があります。
もしかしたらむし歯以外の大きな疾患が潜んでいて、歯医者よりも先に総合病院へ行った方がいい可能性もあるのです。
体力面のストレスはもちろん、精神面のストレスも溜まっていないか、冷静になって考えてみましょう。上司とそりが合わない、子どもが反抗期で言うことを聞かない、親や自分の老後が心配……そう思い悩んでいるうちに自律神経が乱れ、気づけばグッと奥歯を噛みしめていないでしょうか?
朝起きたときになんだか顔が疲れているなぁと思ったら、夜寝ている間にストレスで歯ぎしりをしているのかもしれません。
歯の不調は身体が発するSOS
それ以外の生活習慣や食生活は問題ないでしょうか?
遅くまでテレビを観ながらゴロゴロしてたり、運動不足だったりしませんか? ファーストフードやコンビニ弁当ばかり食べ、飲み物は甘いコーラやジュースばかりだとしたら、歯も身体も健康的に過ごせるはずがありません。たまにならいいのですが、毎日の生活習慣がそれでは、歯に不調が出るのも当然と言えます。適度な運動とバランスのいい食事に、すぐに切り替える必要がありそうです。
このように、歯の不調は、心身のストレスの蓄積や生活習慣の乱れが表に出た結果なのかもしれません。ですから、歯が痛むからただ歯を治せばいいというわけではなく、その根本的な原因が何であるかを突き止めて解消しなければ、またすぐに歯の不調は出てくるはずです。歯の痛みは、身体が発しているSOSだということに気づきましょう。
ストレスは歯の状態に影響する
ストレスと身体の不調が結びついていることは、みなさんも知識として頭の中に入っていると思いますし、実感したことがある人も多いと思います。
こちらの記事「日常生活に潜む『ドライマウス』の意外な原因と対処法」でも「ストレスが唾液の量を減らす」という話をしましたが、それ以外にもストレスは口腔内にさまざまな影響を与えます。
まず、ストレスがあると身体全体の抵抗力が低下します。身体の悪いところをだましだまし使っていると、ストレスが溜まっているときに症状が顕著に表れることがあるんです。たとえば、歯ぐきに慢性的な腫れがあり、普段はそれほど気にならないから、とりあえずかぶせものだけをして過ごしている場合。
身体が健康でストレスフリーの状態なら、日常生活では支障がないのですが、寝不足だったり精神的・肉体的にストレスが溜まっていたりするような状態だと、突然痛みが出ることがあります。それだけではなく、抵抗力が落ちたことで口腔内に菌が増殖してしまい、腫れがひどくなってしまうということも珍しくありません。
旅行先で歯が痛む……原因はストレスと気圧の変化
海外旅行に行き、楽しい旅になるはずが、熱が出たり急にむし歯が痛くなったりして全然楽しめなかった……という経験はありませんか?
風邪をひいたときや寝不足のときなど、体調が悪いときにも身体はストレスを感じますが、海外旅行や出張などで時差の違いに身体が慣れないときも、大きなストレスを感じています。旅先で体調を崩すのは、飛行機や新幹線に乗ったときの気圧の変化にも関係があります。特に耳が詰まっていると歯にもストレスがかかりやすくなります。
私は趣味でスキューバダイビングをするんですが、潜ったときに一定の深さを越えると、いつも水圧で歯が痛くなります。以前歯の治療をしたことのある部分に強烈な痛みが走ります。なぜそのように痛みが出るのかと言うと、口腔内にできた膿の袋が気圧の変化によって膨らむから。
ポテトチップスの袋を持って高い山に登ると、頂上に着いた頃に気圧の変化で袋がパンパンに膨らむ、という現象を聞いたことはないでしょうか。それと同じことが口の中で起こっていると思ってください。
膿は袋状になっているので、袋の中の空気の逃げ場がなくなれば膨らみます。それにより歯や歯ぐきが圧迫され、痛みが出るという仕組みです。慣れてくると痛みは引いていきますが、膿を治療しないことには旅行のたびに同じ痛みを繰り返す可能性があります。慢性的に口の中に弱い部分がある人は、旅行に行くときは少し気をつけた方がいいかもしれません。
国内ならまだしも、もし初めて行く国で歯に激痛が走ったら、現地の病院に頼るのは不安が大きいのではないでしょうか。旅先で後悔しないためにも、「出発前に歯医者に行く」というのを旅行準備の1つに加えてみてください。
定期的に歯の状態をチェックしよう
今回紹介したように、歯の不調はストレスの蓄積や生活習慣の乱れが原因になっていることが多いです。それらの原因は身体の他の部分の不調も引き起こします。つまり、定期的に歯の状態をチェックすることは、全身の健康に繋がってくるのです。
健康な生活を送るためにも、歯の状態をチェックし自分の生活を振り返ってみてはいかがでしょうか。
『顎がゆるめば、不調は改善される』 (クロスメディア・マーケティング) |