「顎がゆるめば、不調は改善される」(著:滝澤聡明)より
むし歯になりにくい人の特徴とは
「いままで1度も歯医者に行ったことがない」
「1日1回しか歯を磨かないのに、全然むし歯にならないよ!」
みなさんの周りにもこんな人、いるんじゃないでしょうか?
「小さい頃、歯医者さんが怖くて仕方がなかったなぁ」なんて話になったとき、
「僕は1度もむし歯になったことがないし、歯医者にも行ったことないよ」
という人がたまにいますよね。
なんとも羨ましい話ですが、そういう人は、
生まれつき歯や唾液の質が良い人なのかもしれません。
むし歯になりにくい歯の質、唾液の質というものがあります。口の中は飲食などによって酸性になりやすく、酸性の状態が続くと、歯が溶けやすくなります。
それを中和させる能力が高い、すなわち口内を酸性から中性にするまでの時間が速い人は、歯の質や唾液の質が良いと言えますね。
これは普段の食生活やセルフケアによるものというより、顔や性格のように遺伝によるものが大きいかもしれません。
歯や唾液の質で良し悪しが決まる
きっとむし歯になりにくい人は、ご両親や兄弟も歯や唾液の質が良いのではないでしょうか。
逆にむし歯になりやすい人は、歯や唾液の質があまり良くない可能性があります。
そういう方は地道にセルフケアをして、定期健診を怠らず、むし歯の発生を予防していただきたいと思います。
私もこれまで3万6千人の患者さんの歯を見てきましたが、それでも一見しただけでその人の歯の質の良し悪しを見分けることは難しいです。
歯を削ってみたときに感覚として「固い歯だな」と感じたり、レントゲンを見て「むし歯になりやすそうだな」というおおよその傾向をつかめたりすることはありますが、唾液は検査をして数値を見てみないことには、その質の程度はわかりません。
気になる方は、治療や定期健診を受ける前に、医師に「唾液の検査をしてほしい」と申し出てみてください。ごく簡単な検査で、唾液が酸性寄りか中性寄りか、量が多いか少ないか、などをチェックすることができます。
その結果を見れば、自分の口の中の状態をより深く理解できるようになると思いますよ。
若い頃は健康だったのに…。40代からの歯ぐきや骨の衰え
歯の質が良い、唾液の質が良い、いままでむし歯は1本も生えたことはありません! という人は一生歯医者いらずかと言ったら、そんなことは決してありません。
実は年を重ねてから、具体的には40代前後に差し掛かった頃から、歯のトラブルを抱え始める人が意外と多いんです。
というのも、
むし歯ができにくい=歯が丈夫
だからといって、歯ぐきや顎の骨も丈夫とは限らないから。
これらはあくまですべて別物と考えていただきたいんです。
たとえば、歯の質があまり良くなくて、歯がすぐ欠けてしまったり、すり減ってしまったりする方がいます。
それは歯がやわらかいから、ものを噛むたびにどんどんすり減ってしまうんですが、その分噛むときの力が歯ぐきや顎の骨に影響しないので、案外骨はしっかりしていることがあるんです。
逆に、歯の質が良い方の場合、噛む力がダイレクトに歯ぐきや骨に伝わるため、 長い年月をかけてその負担が少しずつ蓄積されていきます。
そしてある年齢に達したときに、一気に歯ぐきや骨が崩壊する……ということは珍しくありません。
建物の柱が弱って折れてしまうように、歯を次々と失っていくことを「咬合崩壊」と言います。
特に 40代や 50代、早い方だと 30代半ばぐらいからその兆候が見え始めます。レントゲンを見ると、「この人は40代になったらかなりの歯を失うのでは」ということまでわかってしまいます。
歯の健康は日頃のケアが大切
見た目が綺麗でも、噛み癖や歯ぎしりで蓄積されてきた負担によって、歯や骨の中身がスカスカ、ちょっと力を加えただけで割れてしまうなんてことも。
決して他人ごとではないのです。だから、いま歯が健康だからといって油断してはいけません。
「昔はむし歯のない健康優良児で、健康診断や定期健診のときはいつも医師から褒められていた。それなのに自分がインプラントや入れ歯をすることになるなんて……」とショックを受けている患者さんも、私はたくさん見てきました。
歯、歯ぐき、顎の骨、唾液、噛み合わせ……
高齢になっても歯を全部残せるかというのは、これらすべての質の良し悪しで決まります。
むし歯になりやすい人でも毎日しっかりケアをしていれば、80 歳でも90 歳でも上下の歯を残せる可能性は十分あるんです。
10年後、20 年後に後悔しないためにも、やはり日ごろの歯磨きや噛み癖のバランスを意識しておくことが大切です。
『顎がゆるめば、不調は改善される』 (クロスメディア・マーケティング) |