「デキる人は、ヨガしてる。」(著:石垣英俊、及川彩)より
大学卒業後、大手企業でビジネスウーマンとしてキャリアを重ねた後、ヨガインストラクターに転身したという経験をお持ちの及川彩さんに筆をとっていただきました。
営業ウーマンであった私が、ヨガを始めて
私はヨガを始めた当初(2005年)、一般企業で営業職をしていました。
当時は肩こりや不眠に悩み、便通も3日に1回が当たり前。
イライラすることも多く、色々なことにストレスを感じ、人やモノに当たったりしていました。
月や期ごとの売上達成に必死で、仕事の後や休日はストレス発散のため浴びる様にお酒を飲んだり、不必要に衝動買いをしたりしていました。
そんな生活を続けていた私ですが、ある時ストレス発散目的で通い始めたジムで、ヨガに出会いました。
週に1・2回のヨガを3ヵ月ほど続けた頃から、様々な変化が起きました。
まず体調が良くなり、肩こりや便秘が改善しました。そうすると、徐々に顔色も良くなってきて、毎日の化粧ノリも違ってきます。
化粧のノリが良いと気分も上向き、仕事にも積極的に取り組めるようになります。
それまで不眠で悩んでいたのが嘘のように夜もよく眠れるようになり、朝も目覚まし時計が鳴る前に、起きるようになりました。
その変化がヨガの恩恵であったことを証明するかのように、ヨガから離れてしまうと、再び肩こりや便秘、不眠、イライラに悩まされてしまったのです。
自分に起こる変化がどうやらヨガのおかげらしい、と気づき、ヨガに魅力を感じた私はヨガを本格的に学ぶことにしました。
ヨガで前向き思考に
ヨガを本格的に学び始めると、考え方にも変化が出てきました。
それまでは自分に満足できず、自己否定がひどかったのですが、ヨガを学んでからは、人と比べることも少なくなり、「自分は自分なのだ」、と思えるようになっていきました。
そしてそれは、私にとって劇的な変化でした。
上手くいかないことがあっても、「これは人として成長するための試練なんだ」と前向きに物事を捉えることができるようにもなりましたし、性格も穏やかになって、人やモノに当たることもなくなりました。
そうやって自分自身が変わると不思議なもので、周囲の人も、優しく接してくれるようになり、良い人間関係を築くこともできるようになりました。
石垣先生もお話しているように「自分の『内側』が変わることで、私の関わる『外側』の世界が大きく変わった」のです。
私は現在、企業への出張ヨガ、通称「オフィスヨガ」でいくつかの会社にお邪魔しています。
参加される方の大半は男性です。
最初の頃は、後ろの方で恥ずかしそうにしていた方たちが、回を重ねるごとに、ワイシャツがTシャツに、スーツのパンツがスウェットに、そしてマットを敷く場所が後方から前方に、と段々変化していくのを見ていると、とても嬉しく思います。
姿勢を正す努力をしてくれたり、今まできっと経験したことのない逆さまになるポーズを、「ああ!」とか、「うう!」と叫びとも呻きともいえない声を出しながら一生懸命練習してくれる姿を見ると、ほろりとすることさえあります。
「風邪をひかなくなったよ」、とか「ヨガの後は仕事がはかどるんだよね」、とか、「接待で沢山お酒を飲んでも二日酔いしなくなったよ」とか、「ゴルフのスコアがあがったんだ!」などといった、嬉しいお声を聴くと、私も誰かの小さな変化の役に立てているのだと感じ、心から充実した気持ちになるのです。
「ヨガ」とは心の働きを止滅すること
ヨガの経典、『ヨーガ・スートラ』の冒頭には、こう書かれています。
ヨーガ ハ チッタ ヴルッティ ニローダハ
ヨガ は ココロの 動きを 鎮めること
心は移ろいやすいものです。
仕事中でも家族のことが気になったり、ヨガのプラクティスをしていても今晩の献立を考えたり、上司に叱られながらも今夜のデートのことを考えていたことだってあります。
ヨガの勉強を始めたばかりの頃は、瞑想の時間も、私の頭の中ではあれこれと考えが巻き起こってしまい、ちっとも集中できませんでした。
そんな私に、当時のヨガの先生はこう声をかけてくださいました。
「瞑想をすると、頭の中でおしゃべりが始まるでしょう。それを鎮めようと焦ると、もっと大騒ぎになる。だから、傍観するんです。私はこんなに色々なことを考えて大変だな、と。そして手放す。それを繰り返し練習してみましょう」
移ろいゆくものを、無理やりに止めることは、もう既に心が動いている証拠ということです。
ヨガは、忙しい心を鎮め、穏やかで、平和で、調和のとれた、本来の幸せな自分へと近づくことなのだと思います。
私たちの魂は、本来とてもシンプルで、苦悩や悲しみなどは知らないものでした。
ところが様々な経験や感情によって、魂は複雑になり、苦悩を知りました。
私たちが今、「自分」と捉えているものは、本来の自分ではなく、複雑化した魂であることも多いのです。
「幸せだ」、「不幸だ」、と判断してしまうのも、その複雑化した魂であるとするならば、その状態で自分自身を、良い悪いとジャッジをしてしまうのは早計ではないでしょうか。
私はヨガを学んで、その時々の自分自身を認め、受け入れ、そして向き合うことができるようになりました。
自分の置かれた状況が、思い描いたものと違うのであれば、まずはそれと向き合う必要があります。
こんなはずじゃないともがく前に、現状を把握し、認める。
そんなシンプルでいて、とても難しいことを、私はヨガから教わりました。
『デキる人は、ヨガしてる。 (Business Life)』 (クロスメディア・パブリッシング) |