勘違いその3 「矯正ベルトをすればいい!」
筋トレでも気合いでもないなら、矯正ベルトはどうだろうか? ラクして治したいという気持ちはわかるが、残念ながらこれも本当の意味で姿勢を矯正することはできない。
理由は、筋トレだけで姿勢が直らない理由と同じ。 繰り返しになるが、猫背とは骨がゆがみ、筋肉が硬直した状態。それをベルトの力で一時的に引っ張り上げても、効果はあくまで一時的なものだ。無理に矯正しようとしたところで、根本的な改善は見込めない。
それに、矯正ベルトをすると、動いていないときはたしかに安定しているように見えても、立ったりしゃがんだりといった「動き」を加えると、微妙な違和感が生じる。体の動きを無視して物理的に無理やり固定しているため、いざ動こうとするとその動きが制限されてしまうというわけだ。人によっては、さらに体をゆがめてしまったり、腰痛の発症や悪化を招いたりもするから恐ろしい。安易に使うのは、あまりおすすめできない。
ゆがんだまま固まった骨、関節、筋肉。これらを在るべきポジションに戻すことが、真の姿勢矯正である。
今、日本は猫背大国だ。周りを見渡して、きれいな姿勢で歩いている人がどれだけいるだろうか? 8割、いや9割がた背中や首が前に傾いていると言っても過言ではない。
どうしてこうも猫背が多いのか。 一番の原因はライフスタイルの変化だ。デスクワークが増え、1日何時間もPCの前に座っていることが当たり前になった。PC作業がメインの仕事ではなくとも、スマホは使うという人がほとんどだと思う。日中はPC、通勤や昼休み、家に帰ってから寝るまで……と、朝から晩までこれら電子デバイスを使い続けている場合もあるだろう。このようなライフスタイルが普通となった今、姿勢が悪くなるのはある種、当然のことと言える。作業や「画面」に集中すればするほど、前にかがんだり縮こまったりする動作が増えるからだ。 反対に「背中を反る」とか「胸をひらく」とか、「肩甲骨を寄せる」といった動作は減っていき、やがて次のような悪しき変化が訪れる。
肩が内側に入り、背中が丸まる。
↓ 骨は本来あるべきポジションからずれて、関節は可動域を奪われていく。
↓ 筋肉も偏った使われ方しかされなくなって、気づかぬうちに退化する。
↓ ゆがみと、それに対する体の順応が進んでいき……
↓ やがて悪い姿勢がラクだと感じるようになる。
↓ ゆがんだまま固定化されたことであらゆる不調が発生(!)
この負の連鎖を根本から解決するには、ゆがんでしまった骨や関節、凝り固まってしまった筋肉を、本来在るべきポジション、在るべき状態へと戻してあげることが先決なのだ。
ブリッジこそ、 姿勢矯正パーフェクトポーズである。
突然だが、あなたは今、ブリッジができるだろうか? 仰向けから手足を踏ん張って体を持ち上げ、弓なりの曲線を描くお馴染みのポーズ。ゼロジムの生徒さんにもクラスメニューのひとつとしてやってもらったところ、これが見事にできない。 とくに男性は顕著だ。肩周りや背中が凝り固まって腕が思うように上がらないし、女性に比べ股関節の柔軟性が低いためか、背中から腰にかけての反りもぎこちない。
「昔はできたのになぜ……」 「子どもの頃はもっと柔らかかったのに」
筋肉の柔軟性は、基本的に加齢によって衰えていく。本当は、年齢を重ねるほど適度なストレッチや運動が必要なのに、大人になった今、多くの人は体をほとんど動かしていない。椅子に座ってPCと向かい合い、動かすのは手先だけ。立ち上がるのはほんの数回で、休憩や移動の合間にもスマホをいじる。 ほぼ同じ姿勢しかしていないため、骨、関節、筋肉がその間違った姿勢に変化していき、いつの間にかブリッジもできない、つまり自分の思ったとおりに動かせないガチガチの体になってしまうのだ。
本書で紹介する姿勢矯正プログラムでは、4週間でブリッジの達成を目指す。
ブリッジは一見ただ体を反っているだけに見えるかもしれないが、じつは様々な骨や関節、筋肉へのアプローチを必要とする。 ブリッジを目指す過程で、大腰筋や腹横筋といったインナーマッスルに、手足や股関節の柔軟性、そして何より猫背の一番の原因である「肩甲骨のズレ」が改善されるなど、姿勢矯正に必要な要素をバランスよく、しかも確実に得ることができるのだ。
また、長年猫背を続けてきた人のなかには、「何が正解かわからない」「成果がはっきりと見えないからやる気が出ない」という人もいる。でも、ブリッジという目に 見える目標があれば、モチベーションもキープしやすい。そう、ブリッジとは、姿勢矯正のパーフェクトポーズとも言うべき、れっきとしたトレーニングなのである。
ビジネスパーソンのための疲労回復専用ジム。ストレッチ×マインドフルネスの独自メソッドで、
脳疲労と身体疲労にアプローチする。「最高の脱力」を目指し、頭と体をリセットする75 分の独自プログラムを提供。ボディメンテナンスとパフォーマンスアップが同時に叶うと、各メディアで話題に。【監修者】重森健太(しげもり・けんた)
関西福祉科学大学教授、博士(リハビリテーション科学)。1977年生まれ。理学療法士。聖隷クリストファー大学大学院博士課程修了。聖隷クリストファー大学助教などを経て、2011年4月から現職。2014年関西福祉科学大学学長補佐、2015年同大学地域連携センター長を兼任。日本早期認知症学会理事、総合理学療法研究会理事、NPO法人ハタラク支援協会理事、NPO法人播磨オレンジパートナー顧問、重森脳トレーニング研究所所長などの役職でも活躍している。