世界中を巡る著者が、現地の健康トレンドを毎週お届けします。
世界一周ノマド生活、12年。
稚内からフェリーに乗り、軽自動車で南アフリカを目指して1年半。
極寒、酷暑、吹雪、嵐にさらされながらも、地味に働くバカボンド夫婦です。
アフリカ大陸最西端のセネガルから、歯を磨かない歯磨き事情をお送ります。
アフリカに紋次郎?
セネガルは、木枯らし紋次郎の世界です。
と言われてもなんのことだかわからないでしょうが、漫画好きには明訓高校の岩鬼選手ともいえます。
ますます意味不明にした感がありますが、その心は口の端に咥えた小枝です。
首都ダカールは、不気味なことに、誰もかれもが口に小枝を咥えているのです。
いい歳をしたおっさんならいざ知らず、派手なドレスを着た女王様風のご婦人たちですら、立派な小枝が口に刺さっています。
ぱっと見にはタバコや葉巻に見えなくもありませんが、どう見てもその辺の枝。
セネガル独自のお洒落かと思いましたが、実はこれ、歯磨きの一種でした。
彼らが咥えているのは、ニーム(あるいは、cure-dent)と呼ばれる15センチくらいの小枝。
これを噛み続けて先端をぼそぼそにし、ブラシ状になった先で歯をこするのです。
小枝をよく噛むと唾液の分泌がよくなり、唾液が虫歯を防ぎます。
また、木の成分が歯の汚れを落とし、殺菌&ホワイトニング。歯茎をマッサージし、口臭を予防します。
想像以上にスグレモノの天然歯ブラシですが、想像以上に美味しくないのが難点です。
世界に広がる小枝歯ブラシ。
この小枝による歯磨きは、セネガルだけの風習ではありません。
アラビア半島が発祥とされ、世界中に愛好者がいます。
アラビア語ではこの小枝のことを、口のなかをキレイにする道具「ミスワーク(Miswak)」、英語では「アラク(Arak-Tree)」と呼びます。
イスラム教の預言者ムハンマドが「断食や祈りの前にMiswakで息を綺麗に」と指導したことで、世界中に伝播。300年前までは、ヨーロッパ人も愛用していたほどです。
ところで12年間も海外を放浪していると、歯痛ほど怖いものはありません。
メキシコの歯医者では、先生のスペイン語がまったくもって意味不明。適当に返事をしていたら、あっという間に歯を抜かれ、男泣きしたものです。
もう二度と泣かされないために、趣味と実益を兼ねて小枝歯ブラシを研究します。
狙い目はエチオピア。小枝歯ブラシの種類が豊富で、それぞれ効能が違うとの噂なのです。
美味しい小枝を探しに、一路エチオピアへ。
旅人は、歯が命!
デザイナー。1965年、北海道旭川市生まれ。札幌で育ち、東京で大人になる。出版社勤務、デザイン事務所、編集プロダクションなど複数の会社経営の後、2005年4月より建築家の妻と夫婦で世界一周中。生活費を稼ぎながら旅を続ける、ワーキング・パッカー。世界中の生の健康トレンド情報をビジネスライフで連載中。