「自分を変える習慣力」(著:三浦将)より
「続けられない」のはなぜ?
一般に、習慣を身に付けようとするとき、その成功率があまり高くないのが現状です。
あなたのまわりにもいませんか?
- 「今回は絶対禁煙する!」と宣言して、しばらくすると、居酒屋でタバコを吸いながら、「そんなこと言ったっけ?」というような行動を繰り返す人。
- 過激なダイエットをして、一時的に痩せたものの、反動で暴飲暴食に走ったり、運動やストレッチが続かなかったりして、リバウンドする人。
ひょっとしたら、「これ、自分のことだ……」と思われた方もいるかもしれません。
仕事ができる優秀な人でさえ、日常のちょっとした習慣をつくることには成功しない。
実はこれ、習慣化にあたり、意志の力で頑張り過ぎたり、我慢をしたり、無理をしたりすることが原因になっているのです。
意志の力は消耗する!
ここで注目すべき事実は、「意志の力は消耗する」ということです。
つまり、意志の力で何とかやり続けようとするには、限界があるということ。
さらには、意志の力を消耗すると、パフォーマンスが下がっていくということです。
フロリダ州立大学社会心理学部教授のロイ・バウマイスターが、ある実験によってこのことを明らかにしました。
教授は、学生を2 つのグループに分け、それぞれのグループの前に焼きたてのチョコレートチップ入りのクッキーを置きました。1つのグループにはこのクッキーを食べることを許可し、もう1つのグループには、我慢することを強要しました。
そして、両方のグループに、難しいパズルを完成するよう要請しました。
結果は……
クッキーを食べることを我慢させられたグループは、我慢という意志の力を働かせる必要がありました。そのため、パズルを始めるときには、意志の力の消耗が行われており、パズルへの挑戦を投げ出した学生が多くいたそうです。
一方、クッキー食べたグループは、平均してより長時間パズルに取り組んだということです。
このように意志の力は消耗していくため、習慣化の初期段階では、なるべく意志の力を多く使う状態にしないことが肝心です。
まずは1つ目の習慣化に専念しよう
そのために重要なことは、「まずは1つのことに集中する」こと。つまり、一度にあれもこれも習慣化しようとしないことですね。
あれもこれも複数同時に習慣化しようとすると、それだけ意志の力の消耗も激しくなります。ビジネスマンであれば、仕事ですでにかなりの意志の力を使っているので、複数の習慣をつくっていけるほど、その日の余力は残っていないのです。
まずは、「1つの習慣を徹底的に習慣化すること」が、成功への最速の近道なのです。
習慣化しようとする項目の絞り込みを行い、それでも複数ある場合は、その優先順位を決めます。そして、最初に取り組む習慣を決め、それに取り掛かるようにしましょう。
1つ目の習慣を3週間から3ヶ月続けたあたりで、どれだけ定着したかを確認します。
それが自分の日常でほぼオートマチックに行われるようになったと思ったら、もうそれは習慣化されたと見ていいでしょう。
この時点では、その習慣行動を続けることに、意志の力をほとんど使わない状態なので、意志の力の消耗もほとんどありません。この状態になったら、次の習慣を始めることができるのです。
1つ目の習慣が良い習慣のスイッチとなる
1つ目の習慣が成功すると、以下のような効果があります。
- それがスイッチとなって良い習慣が波及していき、好ましくない習慣がなくなっていく。
ダイエットのために運動をした直後は、ちょっと食事も控え目にしよう…という意識が働いたり、早起きした日は空いた時間で勉強しよう…といった意識が、自然と働いてきますよね。良い習慣はどんどん連鎖するのです。
- 複数の習慣化の達成が、遥かに容易にできるようになる。
1つ目の習慣化に成功したら、習慣化のコツをかなり掴めてくるはずです。ちょっと休憩して、2つ目の習慣化に取り掛かりましょう。すでに1つ目の習慣は意志の力を使わずにできるようになっていますから、1つ目の習慣を当たり前に行いながら、2つ目の習慣化に専念することができます。2つ目もオートマチックにできるようになったら、またちょっと休憩を挟み、3つ目に取り掛かるといった具合で進めていけば、憧れていた習慣を次々に身につけていくことができます。
習慣化を1つずつ確実に成功していくことは、小さな成功体験を積み重ねるという意味でもとても重要です。1つ1つの習慣をつくり上げていくと同時に、小さな成功体験によって、自己効力感や自己肯定感を上げていくという優れた戦略でもあるのです。
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