世界中をめぐる著者が、現地の健康情報を毎週お届けします。
日本を脱出して、12年。
軽自動車で大陸を彷徨うこと、1年半。
1.5合炊きの炊飯器を持ち歩く、自炊派のノマドです。
働いたら負け。
暑いアフリカの、さらに暑い内陸部。
海のない国マリ、ブラックアフリカです。
気温40度超えの体感温度50度、皮膚感覚は60度オーバー。
暑いというより、熱いです。
顔の毛穴に突き刺さる、剣山のような熱気。脳天に漬物石が乗っかった倦怠感。
「アフリカの大自然が好き」などと萌えたことを言っていると、速攻で燃え尽きます。
日差しの強い日中はトイレに行くだけで膝が折れ、そもそも頻尿自慢の筆者をして日に2度しか小便がでず、膀胱が泣いています。
気をぬくと、カラダが蒸発するか、自然発火しかねない天然サウナのなかで、よくもまあ、マリの人たちは生きているものです。
彼らは日がな一日木陰に寄り添い、ぼんやりと沿道を眺めて過ごしていますが、それが生きる術でした。
できるだけ動かずに、木陰に引きこもること。
村人全員がニートにしか見えませんが、生きるために一生懸命呆けています。
働けば働くほど逝っちゃいかねない大地での、唯一の健康法なのです。
天然サウナの昼寝。
唯一の健康法には、上級編があります。
昼寝。
たかが昼寝とバカにできぬ、されど昼寝。
日差しを遮った木陰とはいえ、遠慮会釈も容赦もない天然サウナですから、座っているだけでみるみる体力を消耗します。
お昼にともなると座る元気すらなくなり、粗末な東屋にごろりと寝転がります。
全身の汗腺から小便となるべき汗がだらだらと溢れ出し、だれかがそっと電気毛布をかけてくれ、顔にヘアードライヤーを当ててくれているような寝苦しさ。
旅行者風情の素人では寝られたものじゃありませんが、寝ないと負けです。
意識を集中して、全力で寝ます。
さもないと、暑さで気を失うかもしれません。
もし、涼しくなる夕方まで眠れたなら、万々歳。
体力が回復したら、夜、ゆっくりと熟睡できます。
働かずして、健康第一。
できるだけ動かずに木陰に引きこもり、全力で昼寝するマリの健康法。
健康にはなりますが、働く暇がありません。
それでも人類発祥以来、脈々と続いたお土地柄。
平均寿命がヤングとはいえ、不思議と皆さんお元気です。
その元気の秘訣は、お釈迦様の瞑想と関係なくもない、菩提樹にありました。
万物を支配する神の化身なるものが、マリの人たちの免疫力を高め、生活習慣病を予防していたのです。
神の化身とは、なんのことなのか!?
その謎については、次回の「売るほど実る聖なる樹」をお楽しみに。
デザイナー。1965年、北海道旭川市生まれ。札幌で育ち、東京で大人になる。出版社勤務、デザイン事務所、編集プロダクションなど複数の会社経営の後、2005年4月より建築家の妻と夫婦で世界一周中。生活費を稼ぎながら旅を続ける、ワーキング・パッカー。世界中の生の健康トレンド情報をビジネスライフで連載中。