呼吸を整えることによって得られるのは、身体面での健康だけではありません。呼吸を整えることで、人との関わりや、自分の在り方を知り、さらには発想力や洞察力まで高めることができるのです。
人との関わりの基本は、まず自分自身から
他人を尊重し、自分との違いを理解する第一歩とは何でしょう?「他人の気持ちに立って考えること」がまず挙げられるでしょうか。しかし、その前提にあるものに目を向ける必要があるのです。
それは、まず「自分を知る」こと。他人を知るためには、他人と自分との境界を認識する必要があります。そのためには、自分という存在をはっきりと認識していないとできません。自分の枠組が曖昧なままでは、他人との境界も曖昧になります。境界がはっきりしてこそ、自分というものを知ることができ、他人と自分との違いも分かるのです。
あなたの存在自体が他人に影響を与えている
整体の世界には、次のようなセオリーがあります。
「自分が楽でなければ、相手は楽にならない。
自分の力が抜けた状態で相手に触れなければ、相手の力は抜けない。」
「まずは自分から」というセオリーです。
人はその存在自体によって、他に影響を与える生き物です。
例えば、誰かと相対するとき、意識的に荒い呼吸で話してみてください。
しばらくすると、相手の呼吸も荒くなってくるはずです。
呼吸のリズムは、他人へと波及していくのです。
自分と他人との境界とは?
「人を変えるには、まず自分が変わることだ」と言われていますが、まさしくその通りです。
自分という存在自体が他者に影響を与え、他者の存在自体が自分に影響を与える…。
そうなると自他の境界というものは、あるようでないと言えなくもありませんが、
この場合の境界というのは、区別がないという意味合いではなく、主体性を持った、別個の存在という意味合いです。
主体性が影響力の根源
主体性を持ち、自分が他人に影響を与える存在であることを自覚することが大切なのです。
その上で、自分の呼吸に「落ち着き」をまとわせてニュートラルに設定し、自分の存在を「静」にすれば、それが相手に伝わり影響を与えることができるのです。
こういったニュートラルな状態は、社会における活動をしなやかにしてくれます。「落ち着き」と「静」は、成熟した人間にとって大切な要素であり、人との関わりを良好に保つベースでもあるのです。
呼吸を整えると、察知能力が高まる
細やかな変化を感じ取ろうとするとき、あなたはまずどうしますか?
自分自身を静かな状態にしておいてから、察知しようとするのではありませんか?
このとき、呼吸を荒げたり、身体を動かしたりしていたら、必要な情報を察知することはできません。
観察力や洞察力のベースになるのが、自分自身の「落ち着き」「静」の力です。
そして、呼吸を整えることによって「落ち着き」「静」を身につけることができるのです。
静かな環境にいる自分をイメージしてみてください。
普段は感じ取れないような、些細な音や風などを敏感に感じ取れるのではないでしょうか?
意識的に感じ取ろうとしなくても、自然に感知されるはずです。
逆に、うるさい環境では、そんな小さな変化を感じ取ることは難しいでしょう。
現代人に必要な「落ち着き」「静」
とは言うものの、現代社会において、そんな静かな環境は望めないでしょう。
そんな中でも、機微を察知する能力を手に入れることは可能です。
「まずは自分から」というセオリーを思い出してください。
外部環境に解決策を求めるのではなく、自分自身という存在の中に、「落ち着き」「静」という状態を作り出してみましょう。
呼吸をニュートラルに設定し、自ら静かな状態を作り出すことで、ものごとの僅かな変化や、人の心の内の変化といった、いわゆる「機微」を察知する力が身についてきます。
静かな状態は、山に籠もったりしなくても、いますぐここでできるのです。
これは、さまざまな刺激や雑音に溢れた現代社会に生きる私たちが、自分を保つために必要な力なのです。
「落ち着き」「静」を今すぐ手に入れるには?
じっと動かずにいることが「落ち着き」「静」なのではありません。忙しく活動していても「落ち着き」「静」の中にいることはできます。
呼吸に意識を向けましょう。自分の呼吸を整えた状態で人と接すると、相手の呼吸状態がよく分かるようになります。
相手の状態が、呼吸を通して読み取れるようになってくるのです。
相手の息遣いを感じとることで、円滑なコミュニケーションを取れるのです。
無限の叡智を呼び込む呼吸法
「落ち着き」「静」という状態は、リラックスした状態やゆとりのある状態です。新しい発想がひらめく時というのは、このような時なのです。
「落ち着き」「静」の状態にあるとき、センサーの感度が高まっています。五感あるいは六感が研ぎ澄まされ、意識的に感じ取ろうとするのではなく、向こうから流れ込んでくるものを受け止めるような感覚で、感知できるようになってきます。
言わば、「授かる」「もたらされる」といったような状態になるのです。
宇宙には、無限の叡智が満ち溢れています。
それを感知できないのは、受け止める力が足りないからです。
呼吸を整え「落ち着き」「静」を作り出せるようになれば、そこかしこに溢れている叡智を受け止めるセンサーの感度が高まり、これまで気づかなかった世界が見えてくるのです。
関連書籍のご案内
記事の内容をさらに知りたい方はこちらの本をお読みください。