「なにもしていないのに調子がいい」(著:森田敦史)より
椅子で実践してみる「自然呼吸法」
誰でもつらくなく、椅子に座って簡単にできる自然呼吸法を説明します。
呼吸が浅い人のほとんどは、素直に呼吸ができずに息を吸う際、吐く際に体が先行、もしくは同時に動いてしまいます。これは一種の力みです。呼吸に必要のない動き(力み)をだしてしまうことによって、深く吸えない状態になってしまうのです。
今から行う呼吸法は、呼吸を自然に深く吸えるようにするための呼吸法です。
ステップ1 姿勢
まず椅子に座ります。両足の裏側を均等に地面に設置させます。
骨盤を立てずに背骨をまっすぐに保とうとせずに、腰に少し寄りかかるように丸くしてOKです。
肩甲骨を寄せたり胸を張ったりせずに、肩は丸くそこから肘が落ちるように、手のひらを上にして太ももに乗せます。顔は正面を向くようにしてください。
多くの人は胸を張り骨盤を立て呼吸法を実行しようとしますが、そのポジションは呼吸に必須な横隔膜が動きにくいポジションです。何よりもそこにずっといようとするのはつらいと感じる人が多いはずです。それがひとつの答えとなります。
ステップ2 無用な力み(動き)を出さない
姿勢の設定ができたならば、いよいよ呼吸法に入ります。
ステップ1のポジションのままで息を鼻から吸います。ここで重要なのは息を数歳に体が上に伸びるような、胸を張るような動きをしないことです。いきなり早く勢いをつけて吸おうとすると、その動きになりやすくなります。その動きが深く吸えない原因になりますので注意が必要です。
吸い方としては、無駄な動き(力み)が出ないように、いつもの深呼吸の10分の1くらいの時間をかけて極めてゆっくりと、少しづつ一定のペースで息を入れていくようにします。
力む人の多くは、吸おうという意識が強すぎて、本来動く必要のない筋肉まで動かしてしまい、それがかえって深呼吸の妨げになるのです。そしてこの際に息を胸に入れようとか、お腹に入れようとか、そういう意識は一切必要なく、どちらかといえば丸くなっている背骨、背中に息を入れるような感覚で吸ってみてください。
少しずつ息を入れて、あるところまでいったならば、物理的にもう吸えないというところにたどり着きます。そこから今度は息を吐いていきましょう。
吐く際も無理をして、頑張って吐こうとするあまりに体を今以上に無理に丸めたり、胃の部分に力を入れて精一杯吐かないでください。
自然に少しずつコントロールしながら、一定のペースで口から勝手に息が出ていくイメージで吐いていきます。
この呼吸法で大事なのは無駄な動き(力み)を出さないようにすることです。吸うときに上に伸びたりのけぞったり、胸を張ったりという動きをしないように吸い、吐くときも無理して体を縮こまらせて吐かないということが大事になります。
このくらいでいいのか?というくらいにゆっくりと静かに入ってくる息と出ていく息を感じながら、ゆっくりと10回ほど深呼吸をしてみましょう。
なぜ整体やマッサージを受けてもすぐに戻ってしまうのか?
息をこれ以上吸えないというところを最大吸気点、これ以上吐けないというところを最大呼気点といいます。この呼吸幅が呼吸のエリアということになります。整体やマッサージ、ストレッチなどは、この呼吸のエリアに応じた体の状態に対してのアプローチになることが多いのです。
マッサージなどをしても体の状態がすぐに戻ってしまうのは、マッサージにより一時的に体の緊張が改善されて、呼吸や体が楽になっているだけだからです。いくら施術を受けても、浅い呼吸をする癖がついている人は、マッサージを受けてもほどなくしてもとに戻る、ということを繰り返してしまうことになります。
そもそも、体は呼吸の状態に応じるということを理解していれば、一時的に気持ちのいい施術を受けるだけで根本解決したいという発想に無理があり、生産性のないことだと気づくはずです。
たとえば自分自身で呼吸法を理解していると、施術を受けたり自分でストレッチなどのセルフケアをしたときに、呼吸が楽になるのを感じるはずです。その感覚をヒントにしながら、自分自身でふだんの呼吸エリアを意識的にニュートラル(ほどよく力の抜けた自然な呼吸状態)に誘導していく、ということをするとケアの効果は持続します。
呼吸法の経験を重ねるごとにニュートラルな自然呼吸をしやすくなる自分を体感することができ、結果として体調回復や体質改善が早く実現できることになるのです。
マッサージの先生の腕が良いとか悪いとかではなく、自分自身がどうすべきか、ということが重要です。基本的に、自分の体を良くするのは自分、悪くするのも自分です。効果を待つというような受け身ではなく、自分自身から積極的に効果を持続させ、またケアによる呼吸変化を捉え、つぎにつなげていくといった姿勢が、大切なのです。
関連書籍のご案内
記事の内容をさらに知りたい方はこちらの本をお読みください。