こちらの記事は週刊女性PRIME(運営:主婦と生活社)の提供でお送りします。
人はどのようにアルコールと向き合うべきなのか
「週末には酒を浴びるように飲み、夕方からだったものが、気がつけば朝から飲むようになっていました」
そう話すのは、20代でアルコール依存症に陥った井沢良太さん(30代・仮名)だ。
月曜日の出勤にも影響が出はじめたころ、社会から転げ落ちたのはある日の朝だった。
「起きたら目の前に飲みかけの酒が置いてあったんです。これを飲んだら会社に行かなくていい。そう思いグッと飲み干しました。それからは意識を失うまで飲み、起きてまた飲むという生活です」
その後、体調を崩し病院で検査を受け、1か月断酒をしたところ数値が回復。“休めばまた飲める”と思ったことも。
TOKIOの山口達也さんも約1か月の入院生活を経て、退院したその日に自宅で飲酒をしていた。2日に山口さん以外のメンバーが行った会見では、松岡も「僕らは依存症だと思っていました」と話していたほど。それぐらい彼の状態は、他人から見ても普通ではなかったのだろう。
依存症の当事者やその家族を支援する『NPO法人セルフ・サポート研究所』の代表で臨床心理士の加藤力さんは、
「アルコール依存症は病気です。心身に与える影響は違法薬物と変わらない」と話す。
井沢さんが酒をやめるきっかけとなったのは、同じ病院に通う人に『AA』(アルコホーリクス・アノニマス)のミーティングに誘われたからだ。
AAとは純粋に飲酒をやめたいと願う人たちが集まる自助グループのひとつ。職業や年齢など関係なく参加できる。井沢さんはAAに通い酒を断った。
前出の加藤さんは、
「自助グループで失敗や成功の体験を伝えるのは自分がそれを忘れないためです。そしてそれを聞いた人が、やればできると回復していくのです」
人生を狂わされた林隆さん(50代・仮名)の場合
林隆さん(50代・仮名)も、酒に人生を狂わされたひとり。
「アルコール依存症は長年飲み続けて陥るパターンが多いですが、私は1杯飲んだだけで意識をなくすまで飲むのをやめられなくなるんです」
トラブルもなく順風満帆に思えたが、27歳のときにした結婚を機に突如、暗転する。
妻の「お酒を控えて」との言葉も届かず、逆に暴言を浴びせる始末で、幼い息子にまで及んだことも。仕事はできていたが家庭は壊れていた。
10年ほどそんな生活が続いたときだった。道でAAミーティングの看板を見て参加を決めた。参加者の“横断歩道の真ん中で酒を飲んでいた”などという話を聞き、「自分も死ぬかもしれない」そんな恐怖から酒をやめた。あれから約20年たつが、妻には10年前に別れを告げられた。
「我慢してくれていたんだなと思いました。ただAAのおかげで、今は良好な関係です」
先日、そんな林さんの自宅を息子が訪れたという。
「いい息子なんですよ。“仕事を一生懸命やって俺を育ててくれた親父を尊敬してるよ”と言ってくれました。それでもどんなに謝っても今も自分を許せない部分がある」
そう話し目に涙を浮かべた。
厚生労働省が’13年に行った調査では、アルコール依存症の患者は全国で約109万人と推計される。
「今回のことで山口さんから離れていく人はいると思うけれど、支援をしてくれる人もいる。孤独や絶望を乗り越えてほしい」(加藤さん)
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