「デキる人は、ヨガしてる。」(著:石垣英俊、及川彩)より
「ヨガっぽい人」、「ヨガっぽくない人」。
「ねぇねぇ、ずっとヨガをやっていても、ヨガっぽくない人もいるよね。ヨガなんか何も知らなくても、ヨガ的な人もいるのに」
以前、ヨガスタジオ近くの居酒屋で、7人のビジネスパーソンとお酒を飲む機会がありました。
その時、思い出したのがヨガの先生が何気ない会話の中で発したこの言葉です。
彼女は多くの生徒さんから支持されているヨガインストラクターです。
その飲み会の席のメンバーは、30代~60代の男性でした。
金融関係、広告代理店、出版社、生命保険会社、自営業、教育関連会社、人材派遣会社と、働いている会社の業種はバラバラです。
仕事でも第一線で活躍しながら、プライベートも大切にしている。
彼らはまさに、私から見ると「デキる人」そのものでした。
〇〇することは、ヨガそのもの
仕事の話からプライベートの他愛もない話まで、会話は盛り上がりました。
彼らは、自慢話は一切しません。
仕事の内容は聞けば答えてくれますが、自分、自分といったところがないのです。
かといって、自信がないとか、へりくだっているというわけでもありません。
常に謙虚でありながら、ニュートラル、まさに自然体なのです。
私は思わず直球で質問をしてしまいました。
「みなさんが思うデキる人ってどんな人ですか」
すると、30代にして大手出版社の役員をされているTさんが答えてくれました。
「自分に対して厳しい人ですかね。それから、自分から動く人。リアクティブ(受け身)ではなく、自ら行動を起こしていくプロアクティブな。周りがどうこうではなくて、自分に基準を置き、自分を律することができる人ですね。例えば、自分が決めた仕事の目標や習慣を続けるのもやめてしまうのも自分次第ですよね。私が尊敬する人は皆、自分に対して厳しいです。私もそうありたいと思っています」
私はこの話を聞いて、自分自身に意識を向けるというのは、ヨガそのものだなと思いました。
その後も会話は続きましたが、人との繋がりを大切にし、相手を思いやる態度を見ているうちに、この方たちは、私がヨガを通じて学んだことを、当たり前のようにやっているんだと気がつきました。
彼らは特にヨガのポーズもしていないし、ヨガの哲学も学んでいません。
それなのに、ヨガの本質ともいえる、先人の智慧を経験的に知っているかのように思えたのです。
彼らの中にはヨガ的なものが溢れていて、どんな時も自然体でいられる、つまりニュートラルな感覚に戻れる術を心得ているようでした。
ニュートラルな感覚を見失っていませんか?
ところで、ニュートラルポジションという言葉をご存じでしょうか。
体幹トレーニングなどで、骨盤などの位置を意味する言葉です。
車のシフトレバーの「N」もニュートラル。
「いずれにもかたよらない/中間位」という意味ですが、前進も後進もできる、いかようにも変化できるポジションということです。
ニュートラルな感覚を自ずと身につけている人は、遭遇する出来事に対して的確な判断や反応ができます。
一方、そうでない人は、本来の感覚を失っているので不自然な状態です。
だから、自然界に起こる物事に対して、過剰な反応を起こしてしまうか、無反応になってしまうのです。
例えばクレーム対応一つでも、ニュートラルな感覚が身についているかどうかで大きな差が出ます。
相手の言動に対して、過剰にへりくだっても、高慢な態度で逆上してもいけません。
一方で真摯に向き合えず、気持ちの伝わらない対応では相手も納得してくれないでしょう。
ニュートラルな感覚があれば、相手の言い分をきちんと聞きながら、落としどころを見つけることができます。
その上で、相手に何を伝えるべきか、どう対応すべきかも自ずとわかるものです。
「デキる人」は、それまでの人生経験から、自然とこの感覚を身につけているのでしょう。
いったん、見つめなおして
いかがでしたか?
日々の業務に忙殺されて、気づけばニュートラルな感覚を見失っていませんか?
心当たりが少しでもある方は、一度、自分の状況を整理し、今の状態を見つめなおしてみてください。
見えなくなっていたニュートラルな感覚を取り戻すことで、仕事の効率も上がり、より豊かな生活ができることでしょう。
『デキる人は、ヨガしてる。 (Business Life)』 (クロスメディア・パブリッシング) |