「デキる人は、ヨガしてる。」(著:石垣英俊、及川彩)より抜粋
体の過敏になっている部分の意味とは?
先日も施術中に、広告代理店にお勤めの50代男性のお客様からこんな質問をいただきました。
「先生、なんかやたら過敏でくすぐったいところってあるじゃないですか。私は今、背中の右側がくすぐったい。それには、どんな意味があるのですか?」
このような過敏な感覚は、皮膚の問題に限らず、その部位と関連のある関節や筋肉、場合によっては内臓の変調から生じている可能性も考えられます。
皮膚はなぜ敏感?その仕組みとは
皮膚は発生学的に脳や神経組織と同じ外胚葉(人体の各組織・器官は三つの胚葉から分化します。胃や腸などの内胚葉、筋肉や骨などの中胚葉、皮膚や脳、神経などの外胚葉)由来。
「皮膚」は、外からの刺激に対して、私たちが素早く反応できるように、触覚や温度覚、痛覚などを感知する感覚受容器が豊富になっています。
皮膚にある感覚受容器が外からの刺激をキャッチすると、脳や脊髄に向かって情報をインプットしていきます。
その情報を元に、脳や脊髄は肉体と内臓に、アウトプットという形で指令を出す。
例えば、皮膚が冬の寒さを感じとれば、体内の熱を外に逃がさないように血管を収縮させ、体温を維持するといった反応が起こります。
火傷するような熱湯に触れれば無意識に手を引っ込めるでしょう。
このような無意識に起こる反応を「反射」といいます。
過敏な部分は不調の証?
注意しなければいけないのが、インプットによる情報の伝わり方によってはアウトプットも本来の反応が起こらないということ(「反射」は無意識下に起こるもので、意識下で起こる「反応」と厳密には異なりますが、本書では、アウトプットによって表れる心や体の表現を「反応」という言葉でお伝えします)。
急に誰かに過敏になっている部位を触れられると、力が入って過剰な防御反応が起こります。
一方で、感覚受容器のセンサーが鈍ければ、ちょっとやそっとの刺激では感じませんし、防御反応も起こらないのです。
例えばこのようなシーンを想像してみて下さい。
あなたの後ろには誰もいないと思っている時に、「○○さん!」と、急に元気な声で名前を呼ばれたとしたら、あなたはどんな反応を示すでしょうか。
安心感に満ちていれば驚かないようなことでも、疲れていたり、不安や緊張が強い時は、いつもより過敏な反応をしてしまうのです。
このように、刺激を感知するのは皮膚だけではありません。
聴覚や視覚といった五感や、関節・筋肉にもセンサーがはたらいています。
外からの刺激に対して、私たちは心も体も、適当な反応が起こることが望ましい。
このようなことを意識しながら、私はお客様の皮膚に触れ、関節を動かしながら感覚異常を見つけだし、アプローチしていきます。
施術後にリチェック(再評価)して感覚に変化があれば(くすぐったかった部位がそうでなくなる、など)、体の反応も本来の状態に戻ってきたといえるのです。
ベッドの上でまっすぐ寝られない人は深部感覚に問題あり?
マッサージでもカイロプラクティックでも、お客様の反応をうかがいながら、状態を感じ取る為に私も自分の感覚に集中します。
特に背骨の関節には注意を払います。
なぜなら、自分で体を動かしても、小さな関節の深部にある感覚は捉えにくいからです。
例えばご自分の背骨の細かい動きをイメージしたことはありますでしょうか。
普段、どの部分に動きの制限や、緊張が表れやすいかご存知でしょうか。
背骨に限らず、関節周辺には固有受容器(関節や筋、腱、内耳に存在し、頭や体の位置や緊張度などを感知するレセプター。このうち、関節や筋、腱の感覚を深部感覚という)というものが密集しています。
先に例を挙げたベッドの上で真っ直ぐに寝られない方は、頚椎を中心に関節の深部感覚に問題があります。
そういったところを見つけ出し、やさしく圧をかけながら、「今、体はどのような状態ですか。どんな感覚を感じますか」と、お客様に気づきを促します。
すると、ほとんどのお客様が感覚の違いに気づきはじめます。
今、自分のどこに緊張や動きの制限が生じていたのか、体の声を聴きながら認識していくのです。
このような気づきは、日ごろの生活習慣を見直すきっかけになり、自分の体に対する意識が高まることになります。
ニュートラルな状態は心の視野を広げる
私にとっては、施術もヨガの延長線上にあるものです。
受け手であるお客様と共に、感覚というものを介してヨガをしているようなものと考えています。
施術によって感覚がニュートラルな状態に戻ると、お客様のモノの見え方や受け取り方が変わります。
そして、外の刺激に対する反応も、次第に変化していくのです。
『デキる人は、ヨガしてる。 (Business Life)』 (クロスメディア・パブリッシング) |