MENTAL

強いメンタルをつくり上げるカギ「脳波」と「腹式呼吸」の基本を解説。

「はたらく人のコンディショニング事典」(著:岩崎一郎、松村和夏、渡部卓)より

欲しいのは強いメンタル

 

上司の心無い一言に傷つき、取引先にはミスを責められ、ここぞという大勝負のプレゼンではヘマをしてしまう……

人生に失敗や挫折はつきものですが、何かある度に深く落ち込むクセがあっては周囲も扱いに困りますし、何より自分がしんどいものです。

どうしたら強いメンタルを手に入れられるのでしょうか。

 

 

ポジティブな脳波「PO」、ネガティブな脳波「ERN」

 

強いメンタルを手に入れるヒントとなる、面白い実験結果があります。

 

イリノイ大学のテマンソン博士らは、普段から運動している人とそうではない人それぞれがミスをしたときの反応を調べ、両者の脳波に違いを発見しました。

 

その脳波というのは、「しまった!」と思ったときに出るクヨクヨする感情の脳波「ERN」と、「次はもっとうまくやろう!」と思う前向きの脳波「PO」。

実験では、普段から運動をしている人はERNは弱く、POが強く出る傾向があり、運動習慣のない人は「ERN」が強く出る傾向が見られました。

つまり、普段から運動している人は、前向きで改善欲が強い脳になっている傾向があるということがわかったのです。

 

メンタルを手っとり早く鍛えるには運動を習慣的に行うのが一番、ということですね。

 

また、運動にはうつ病予防の効果もあります。

運動をすると「ノルアドレナリン」「セロトニン」「ドーパミン」といったホルモンが増え、それぞれうつ病を妨げる働きをするためです。

これらはそれぞれ次の働きをします。

 

「ノルアドレナリン」………脳を目覚めさせ働きを良くし、うつのせいで失いかけていた自尊心をとり戻します。

「セロトニン」………自尊心を保ち、気分や衝動を調整したり、ストレスホルモンのコルチゾールを中和したり、学習に必要な前頭前野と海馬との繋がりを細胞レベルで整えたりします。

「ドーパミン」………気持ちを前向きにし幸福感を増やし、やる気と集中力に通じる注意システムの活性化を促します。

 

このように、運動は身体を鍛えるだけでなく精神も整えるのです。

 

 

単純作業で頭の切り替え

 

実際にメンタルが弱っていて同じことで延々と悩んでしまっているときにも、積極的に体を動かしましょう。

 

このときポイントとなるのは身近な「単純作業」です。

意識的に単純作業をするうちにその作業に入り込む過程で集中できることから、余計な記憶がワーキングメモリの中に入っていく余地が生まれません。

ひとつのことにとらわれすぎてクヨクヨ悩んでいるのは、記憶というシステムに乗っ取られてしまっている状態。

身体を動かして作業に集中することで、この状態を打破することができるのです。

 

ランニングや掃除、食器を洗う、シャワーを浴びるなどの体を動かす単純作業をとり入れてみると、同時に頭の切り替えが行われ、悩みが解消されやすくなります。

このときにリズミカルな音楽などに合わせると良いかもしれません。

 

 

腹式呼吸は精神状態を落ち着ける

 

腹式呼吸を行うのも有効です。

次の手順で行ってください。

 

①1小節分の4拍(4秒)でゆっくり鼻から息をおなかに向けて吸い込む

②1小節分(4秒)で息をとめる

③2小節(8秒)でゆっくり口から細く長く、静かに息を吐き出していく

 

 

慣れてきたら息を吐き出す小節を2小節から4小節に伸ばしていきます。

息を吸い込む長さを2小節にしてもかまいません。

 

この息をはき出すときに副交感神経が刺激されて精神状態が落ち着くとされています。

日々の予定に追われていると、自律神経のうち興奮状態を意味する交感神経優位の状態が続くため、呼吸が浅くなり脳は酸欠になります。

腹式呼吸で脳に酸素を届けることで副交感神経が優位になりセロトニンが増えるため、気持ちの切り替えが上手くできるようになるのです。

 

 

ゆったりした動作を意識して

 

モラルハラスメントなどが社会的な注目を浴びていますが、ハラスメントの加害者には呼吸が浅い人物が多いとも言われています。

また、瞬間湯沸かし器のようなすぐに怒る人、切れる人にもこの腹式呼吸法の習慣が有効です。

呼吸だけでなく、ゆったりした動作も副交感神経のスイッチをオンにするので、焦ってイライラしたり悩んでクヨクヨしているときこそ、立ち止まり姿勢を正し、ゆっくり動きゆっくり話す、食事をするといったことを心がけましょう。

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