「忙しい人の世界一シンプルな「食」習慣」(著:杉本恵子)より
炭水化物は「悪」なのか
白いご飯、パン、麺類。これらの炭水化物が太る原因、少しでも減らした方が健康にいいと言われていますが、本当にそうなのでしょうか。
栄養学の観点から見れば、炭水化物そのものは「悪」ではありません。現実的な問題としては、炭水化物を含め「食べ過ぎてしまうこと」が身体に負担をかけてしまっているのです。
一時期、炭水化物抜きダイエットなどが、さまざまなところで取り上げられたことで、まるで炭水化物が悪者のようになってしまったのですが、私たちが摂取する栄養素は炭水化物に限らずタンパク質でも脂質でも食べ過ぎればよくないかたちで身体に蓄積されてしまいます。
また、特に肥満でもない人が炭水化物をほとんど摂らないダイエットをしたために、逆に身体の調子を崩すこともあるのです。
炭水化物を摂らないでいると疲れやすい
三大栄養素の一つである炭水化物は、他の栄養素を吸収しやすくなるためにも欠かせません。炭水化物を摂らないと、エネルギー不足となり、本来なら筋肉をつくるために使われるタンパク質が分解されてしまい、かえって筋肉不足で疲れやすい身体になってしまいます。
やはり少なくても、一日にご飯を一膳は食べたほうがいいでしょう。
炭水化物の過剰摂取も身体がだるくなる
とはいえ、炭水化物ばかり多く摂取しているとエネルギー過剰となって栄養素が燃えなくなり、身体がだるくやる気が起きない要因にもなります。炭水化物のエネルギーが燃えずに身体に残っていると、燃えカスである疲労物質の乳酸が蓄積してしまうからです。
疲労物質を蓄積させないためにはビタミンB群を
夏場の暑い時期などは食欲がないため、つい冷えた麺類ばかり食べてしまうビジネスパーソンも多いのですが、そういったときも生卵を1個トッピングしたり、チャーシューを付け加えるといった工夫をしてみてください。
チャーシューなどのビタミンB群がエネルギーを燃やす着火剤の役割をして摂り過ぎたエネルギーを燃焼させてくれます。
炭水化物は一日に必要カロリーの3分の1の量で
身体に負担にならない炭水化物の摂取量は、一日に必要あカロリーの3分の1ぐらいが理想的。
成人男性の一日に必要なカロリーを仮に1800キロカロリーとすると(個々の基礎代謝量や運動量などで異なります)ご飯一膳のカロリーが大体160キロカロリー前後ですから、3食でご飯一膳ずつであればクリアできることになりますよね。
なぜ一日に必要なカロリーの半分を目標にしてはいけないのかというと、炭水化物はどうしても食べ過ぎてしまうからです。
ご飯一膳と決めていても、お腹が空いていたり、おいしいおかずがあればもう一膳おかわりしたくなったり、小腹が空いたときにパンや麺類を食べてしまったりすることもあります。
だから、あらかじめ厳しめに炭水化物の摂取量は一日に必要なカロリーの3分の1としておくことをお勧めします。
過剰のならない炭水化物の摂り方
夏場などは、どうしても冷たい麺類を摂ることが多く、炭水化物の摂取量が増えてしまいます。そんな麺類好きにお勧めするのは「冷やし中華」です。
まず、見た目にも色とりどりで食欲をそそります。ハムやチャーシューなどビタミンB群をはじめ、トマト、キュウリ、錦糸卵、黒ゴマなどがバランスよく揃っているからです。
冬場のラーメンも、トッピングに玉子、チャーシューをはじめ、野菜などをつけて、栄養バランスのよいものを選びましょう。
炭水化物ダイエットで体重が一時的に落ちる人はお酒好き?
炭水化物は決してそれ自体が「悪」ではないのですが、炭水化物ダイエットや糖質制限ダイエットに成功したという話を聞くと、「炭水化物をもっと減らすと体重を落とすことができて健康になれる」と思い込んでしまう人も多いことでしょう。
しかし普通の生活をしている人がいきなり炭水化物抜きダイエットに走ってしまうのは、エネルギー不足で疲れやすくなったり他の栄養素を摂りこみにくくしてしまうため、本当にいいことなのかどうか疑問なのです。
どうも、炭水化物ダイエットや糖質制限ダイエットで体重を落としている人は「お酒好き」の人が多いような気がします。
お米のご飯を食べなくても、そもそもアルコールで糖質を摂取して、さらに肉類でタンパク質もせっせと摂っているために、一時的にはうまくいっているように見えるわけです。
お酒が好きな人は、炭水化物でお腹が満たされてしまうのが嫌なので、炭水化物ダイエットも苦にならないのではないでしょうか。
一時的な体重の減少を目指さず自分の食生活を考える
人間の身体は本当にうまくできています。太る人には太るだけの理由があり、体重を落とせる人にもそれだけの理由がある。
ですから、深く考えずにやり方だけを真似するのではなく、まず自分はどういう食生活をしているのかという点から考えて、一時的な体重の減少を目指すのではなく、トータルで健康な身体になれるために何をすべきかを考えてみてください。
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