「デキる人は、ヨガしてる。」(著:石垣英俊、及川彩)より
ヨガをなぜ始め、続け、そして伝えるのか。「デキる人は、ヨガしてる。」の著者2名によって、ヨガのエキスパートにインタビューを行いました。
お話を伺った人:ケン・ハラクマ氏
インターナショナルヨガセンター(IYC)&アシュタインガヨガジャパン主宰。日本ヨガ界の第一人者。
―ケン先生がヨガを始めた当初は、日本でヨガをされている方はやはり少なかったのでしょうか。
約22年前、私がヨガを始めた頃は、現在のヨガスタジオといった雰囲気ではなく、「ヨガ道場」の時代でした。少し閉鎖的で特殊な感じがする。
私のヨガの先生はアメリカ人だったので、クラスも英語で、参加者も9割位は外国人の方で、残り1割は外資系企業に勤める英語のわかるOLさんでしたね。
私がヨガを教え始めてから2年半位で地下鉄サリン事件が起こりました。その時ヨガが問題になって、バタバタとヨガ道場もクローズしていきました。ただ、私のところは外国人の方がメインで、クラスも英語で行っていましたし、影響もなく、逆に事件の後にいらっしゃる方が増えたんです。
そこからフィジカル面やファッション性も兼ね備えた現代の西洋的なヨガが広がっていった感じですね。その頃、雑誌『Tarzan』ともお付き合いがあり、エクササイズとしてもヨガが注目されていきました。
その後はヨガスタジオを経営しながら、外資系の銀行・証券会社・保険会社など企業さんからもヨガレッスンのオファーをいただきました。健康志向も高まって、ストレス解消の手段の一つとして、ヨガが認識されたんですね。
その頃、ストレス・バスターズを作ったんです。18年位前ですか。商標も取って。それでストレスを解消するプログラムを企業さんに提供していきました。その後、スポーツクラブで初めてヨガのイベントをしたり。
―なるほど。ヨガフェスタもケン先生が始められたのですよね。
13年前位ですね。
―私たちも参加させていただきました。その節はありがとうございました。ケン先生がヨガを続ける理由は何でしょうか。
最初はポーズをとることがヨガであったり、マットの上で動くことがヨガだったのですが、食べることもそうだし、精神的メンテナンスもそうだし、体も心のコンディショニングも含めて、色々な方法が広がると、起きてから寝るまでヨガをしているような。
そうなると「生活=ヨガ」になって、ヨガをするというよりは、ヨガをしないことができないというような。それが当たり前になってくれば、生活の一部になります。そうなると、ヨガをする前のライフスタイルを見ても、「あれはヨガっぽかったな」と繋がる部分はあります。
新しくヨガを学ぶ方がいても、「既にヨガをやっているよね」と感じることは多いですね。どれがヨガだったかというポイントだけを伝えてあげると、そこをもう少し深めると、別に新しいことをしなくても、今の生活の中にヨガ的なエッセンス、考え方、実践方法を入れてあげれば良いなと。
―ヨガがポーズ、ポーズと一部で思われているなかで、生活が既にヨガ的な方もいらっしゃるな、と私たちも感じております。ケン先生はナンシーさんからヨガを学ばれたとうかがいましたが。
彼女から学んだことは、普通だったら動揺してしまいそうな出来事が起きても、動じないスタンスですね。
―ケン先生はヨガを広めていくことに、使命感を感じておられたりしますでしょうか。
やらなければいけない、といった風には考えていないですね。あくまで自分のヨガの延長線上で広がっていった感じです。
私の周りに10名の方がいらっしゃったら、その10名の方の手足も使ってヨガをしている感覚ですね。ヨガのクラスも行っていますが、参加される方を増やすことを目的にはしていません。経済活動でいかに利益を上げるか、という形ではないライフスタイルですね。やりたいことをやって、喜んでいただいて。
―ヨガを始めてみればいいのにな、と思うような方に接することはありますか。
ヨガの中身を理解することで楽になるんだろうな、と思う方は時々いらっしゃいますね。ただ、楽になることが、その方にとって良いか悪いかの判断はできません。そういうシチュエーションになったらトライしてみたら、というアドバイスはしますね。本人が何を求めているかにもよります。かといって、ヨガは依存するものでもありません。
―そうですね。ビジネスパーソンがヨガを知ることで、どういった効果が期待できると思いますか。
仕事に限らず日常生活全般に共通することですが、物事を継続していくとどうしてもエネルギーが滞ってきます。呼吸が少ないと、体のどこかに疲れも出てきます。崩れていく状態をどこかでリセットし、リフレッシュして再スタートする場があればと思います。構えてヨガスタジオに行かなくても、それは日常の中でもできることです。
―メンズヨガなど、最近は男性の間でもヨガが流行ってきていますね。
仕事やそのほか、生活の中で一番ストレスのかかる場面で、短時間でリセットできる、リフレッシュできるプログラムを取り入れてもらうことが、まず入口として良いと思います。
―「デキる人は、無意識にヨガをしている」という気づきが、本書のきっかけになったのですが、「今現在ヨガをやったこともないし、ヨガなんて知らない」というビジネスパーソンに向けて、何かアドバイスをいただけますでしょうか。
生活の中でご自身に一番ストレスのかかるところを見つけてもらって、その内容に沿ってアドバイスをすることはできます。そのストレスをリセットするために、具体的にやれることに結びつけていきます。イマジネーションの意識的変化だけでは、中々実感はできないものです。五感に対する刺激と、情報がセットになって「すっきりした」「気持ち良い」といった実体験として結びつくと、効果があります。ビジネスパーソンの方も、ヨガを試してみることで、それを体験していただければ、と思います。
―ありがとうございました。最後にケン先生にとってヨガとは一言でいうと何になりますでしょうか。
ヨガとは、「ヨガ」です。
インターナショナルヨガセンター (IYC) &アシュタンガヨガジャパン主宰。日本ヨガ界の第一人者。幅広いヨガ指導と健全なヨガの普及活動を行う。全国各地でアシュタンガヨガを中心に各種指導者養成コースを年間通じて行う。日本最大のヨガイベント・ヨガフェスタ他、大型ヨガイベントの企画運営を手がける。著書『ココロヨガ』(セブン & アイ出版)、『ヨガから始まる』( 朝日出版社 )、『ヨガライフ』(春秋社)。一般社団法人アスリートヨガ事務局代表理事。社団法人国際ホリスティックセラピー協会理事。www.iyc.jp
『デキる人は、ヨガしてる。 (Business Life)』 (クロスメディア・パブリッシング) |