「デキる人は、ヨガしてる。」(著:石垣英俊、及川彩)より
「筋膜」って聞いたことはあるけれど…
ここ数年で、メディアに注目されるようになった「筋膜」という言葉をご存知でしょうか。
筋膜とは、筋肉を覆っている膜のこと(正確には内臓を包むものや皮下組織の膜なども含まれます)。
沢山ある単体の筋肉を飛び越えて、筋膜は全身をひとつなぎにして体の形状記憶をしています。
筋膜だけではありません。
私たちの体は皮膚で覆われ、骨と骨も関節で繋がり、神経や血管、リンパなど、全身くまなく張り巡らされています。
特にこの筋膜は、私たちの体の形を維持するのに必要不可欠なものです。
筋膜に縮こまりやよじれがあると、猫背になったり、肩こりや腰痛で悩まされることもあります。
それもその部位に問題がなくても、遠いところの問題が痛みなどの症状を引き起こします。
まさに私たちの体が有機的につながりあう自然体であることを感じます。
筋膜が腰痛の原因に?
意外かもしれませんが、筋膜はメンタルや感情とも関わっており、今や国民病と言われる腰痛の原因としても注目が集まっています。
ストレス社会の現代は、腰痛を「生物・心理・社会的疼痛症候群※1」として捉えるようになりました。
以前、広告関係の会社で人事部長をされているお客様が、腰痛を患っている男性社員が多いことを嘆いていました。
腰痛はなかなか完治しないうえに、心の問題まで併発しているケースが多いというのです。
長谷川淳史 著『腰痛は<怒り>である 普及版』(春秋社)では、ジョン・サーノ博士が、無意識のうちに抑圧されやすい怒りの感情が体に「防衛機制」をつくり、自律神経などを介して筋肉・筋膜を緊張させ、難治性の腰痛を引き起こしていると提唱しています。(TMS:緊張性筋炎症候群)
どんな治療でも改善しなかった腰痛が、筋膜アプローチによって長年の痛みから解放される例は、私の治療経験からも少なくありません。
今の治療で改善しないときは…
しかし、受け身の治療(パッシブケア)だけでは改善しにくいケースもあります。
そのような方には、自ら能動的に体を動かし、呼吸や体の感覚に意識を向けていくアクティブケアが有効です。
ヨガのポーズは関節の動きを改善し、筋膜を適度にストレッチします。
体の動きや感覚を意識しながら呼吸を深めていくので、バランス感覚が養われ、自然でラクな呼吸を取り戻すことができる。
姿勢と共に気持ちの変化も生まれ、体液循環もうながされます。
つまり、ヨガは複雑系※2である私たち人間にまるごとアプローチできるホリスティック(全体性やつながりを意味する言葉)なツールなのです。
ヨガはストレス社会の切り札になるか?
いかがでしたか?
ストレス社会の今だからこそ、あらためてヨガの可能性に期待が高まります。
今後よりいっそうヨガの科学的研究がなされていくでしょう。
腰痛持ちの方は、ぜひヨガを試してみてください!
※1「生物・心理・社会的疼痛症候群」
腰痛は構造的な問題だけでなく、メンタル面やその人の仕事や家庭環境などの要因が関与していると考えられている。
※2 複雑系
多くの要素からなり、部分が全体に、全体が部分に影響しあう構造と体系を持つもの。
『デキる人は、ヨガしてる。 (Business Life)』 (クロスメディア・パブリッシング) |