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「腹式呼吸」で手軽にリラックス!−自律神経と呼吸の関係性とは

仕事に行き詰まったとき、イライラが収まらないとき、きっとあなたはハーっと大きく息を吐き出すでしょう。では、なぜ大きな呼吸をしたくなるのか、その理由をご存知でしょうか?

 

この記事では、猪俣武範氏の著書『最高のデスクワーク』より、呼吸が自律神経にどのように影響しているのか、そしてリラックス効果を引き出す呼吸法についてご紹介していきます。

自律神経とは?

会議でのプレゼンを無事終えたときや、何日もかけてつくった資料が完成したときなど、仕事をやり遂げた瞬間はホッとしますよね。あなたはフーッと一息つくかもしれません。何をやってもうまくいかないときや、残業が続いて心身ともに疲れ切ったときなどは、思わずハーっとため息をつくこともあります。このようなときは、たいてい大きく息を吐き出しています。

 

大きく息を吐くと、体の緊張がとけて力が抜けます。このとき、緊張感がゆるんで気分的にもリラックスできるのは、副交感神経が優位になるからです。脳や脊髄から全身の細胞に張り巡らされた自律神経は、交感神経と副交感神経のバランスによって緊張と弛緩を繰り返し、人間の生理機能を調整しています。心臓の拍動、血圧や血糖値の上げ下げ、体温の維持・調整など、自律神経はアドレナリンやアセチルコリンなどの神経伝達物質によって操縦されているため、本人の意思ではほとんどコントロールできません。

 

自律神経のバランスと呼吸の関係とは?

しかし、ひとつだけ意識的に自律神経に直接アクセスできる方法があります。もうおわかりですね。そう、呼吸です。

 

私たちの生活は、緊張と弛緩の繰り返しです。がんばるときはアドレナリンが出て交感神経を優位にします。「疲れた〜眠い〜」というときは、アセチルコリンが出て副交感神経を優位にします。

 

結局、人間の健康は緊張と弛緩のやり繰りをどうするかで決まります。このバランスが崩れて、緊張しっぱなしでも弛緩しっぱなしでも病気になります。

 

たとえば、企画のアイデアを絞り出すとき、出てきたアイデアを現実化する術を考えるとき、つまり私たちが仕事に集中しているときには、つい息を詰めてしまいがちです。このとき、身体のギアは交感神経に入っています。緊張している状態です。

 

でも、長時間緊張し続けることには耐えられません。エネルギーを使いすぎて酸欠状態になるからです。そこで脳の視床下部(自律神経の中枢)は、酸欠を回避して集中力を持続させるために、いったんギアを副交感神経に切り替えます。新たな酸素を取り入れるために、二酸化炭素を排出する必要があるからです。

 

正しい呼吸法でリラックス&集中力アップ

息を一度吐いてから、大きく息を吸って新たな酸素を取り入れ、再び交感神経のギアを上げていく……。

 

根をつめて取り組んでいるときの呼吸は、このようなイメージではないでしょうか。こんな感じで交感神経の緊張が続けば、やがて疲弊してストレスが溜まっていくでしょう。しかし、呼吸と自律神経の関係がわかっていれば、リラックスしつつも集中力を持続させることが可能です。

 

“吸う”より“吐く”に意識を向ける。

呼気(息を吐く)→副交感神経(弛緩)

呼気を(息を吸う)→交感神経(緊張)

 

ポイントは、呼吸時にゆっくり息を吐くこと。この意識を持つだけで、副交感神経を刺激してリラックスしやすい体に変えることができます。酸素を取り入れるために、深く息を吸い込むことはもちろん大事です。しかし、しっかり息を吐き出すことでより多くの酸素を取り込むことができるわけです。

 

登山などで息が切れて苦しい経験をしたことは、誰にでもあると思います。そんなときは、とりあえず深呼吸です。息を吸う前に一度思いっきり限界まで息を吐き切ってみてください。すると次の吸気時、より多くの酸素が取り込まれ、呼吸が楽になります。ぜひ試してみてください。

 

腹式呼吸でより深い呼吸を

私たちは普段、無意識に呼吸していますが、呼吸法の訓練をしていなければ、たいてい胸式呼吸を行っています。胸式呼吸とは、肋骨の下にある胸周りの筋肉(特に肋間筋)を使った呼吸です。

 

一方、肺の下にある横隔膜(「膜」という字がついていますがこれも筋肉です)を意識的に使った呼吸を腹式呼吸といいます。腹式呼吸はある程度トレーニングしないと身につきませんが、胸式呼吸よりも深い呼吸ができるので、覚えておいて損はないと思います。

 

胸式、腹式のどちらが良いかということよりも、良い姿勢で深い呼吸を心がけることが大事です。心を落ち着かせたいときは、息をゆっくり吐くことを意識する。そして、仕事の合間には深呼吸する余裕を持てると良いですね。

 

 

【腹式呼吸のやり方】深呼吸で気持ちを安定させよう

腹式呼吸は横隔膜や様々な腹筋を使うので、深い呼吸を得られるとともに体幹も鍛えられます。

 

息を吐く

最初に、口からゆっくり息を吐き切ります。息を吐くときは、お腹をへこませます。吐き終わった瞬間、意識的に脱力してみましょう。

 

息を吸う

お腹を膨らませながら、ゆっくり鼻から息を思いっきり吸い込みます。横隔膜が下がり、腹圧が高まるので体幹トレーニングにもなります。

 

P O I N T

深呼吸の際には、臍(へそ)から指3本分くらい下の腹部を意識しながら行いましょう。このあたりは腹横筋(深層筋)と腹直筋(表層筋)の位置が上下入れ替わる部分で、これらの筋肉が腸を支えています。したがって、臍下の腹筋を鍛えると便秘も解消されます。ちなみに、東洋医学ではこのあたりを「丹田」と呼んでいます。

 


■出典:猪俣武範『最高のデスクワーク』クロスメディア・パブリッシング 2020

 

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