「デキる人は、ヨガしてる。」(著:石垣英俊、及川彩)より
道徳的な日常生活の「実修」に専念する「カルマ・ヨーガ」は、ポーズや呼吸法、瞑想をしなくても行うことができる生き方のヨガといえます。
デキる人たちと接していると、こういった経典に基づくヨガの哲学を学んだかのように、実に毎日を自然体で過ごしているように見えます。
ここでは、ヨガ哲学が教えてくれる智慧と、「デキる人」たちの思考や習慣を、私たちなりの視点でヨガ的な習慣としてまとめました。
繋がりを大切にする
現代はスマートフォン一つあれば、誰とでも簡単に繋がることができる時代です。
ついひと昔前までは携帯電話さえ、今のように普及していませんでしたが、そんなものがなくても、人との繋がりを感じながら幸せな生活を送っていたように思います。
インターネットのおかげで、私たちはすぐに必要な情報を手に入れられますし、電話やメールなどを通じて、いつでもどこでもすぐに伝えたいことを伝えられるようになりました。
便利になることは悪いことではありません。
その恩恵を受ける私たち自身が、その技術をどう活かすかが大切なのです。
メールよりも電話、電話よりも手紙、手紙よりも直接会って話をする方が、温度感が伝わって、相手に気持ちが伝わります。
豊かな時代だからこそ、人との繋がり、そして自然との繋がり、関わり合いを大切にしていく必要があります。
大手広告代理店で役員をされていたKさんのお話です。
Kさんは気さくで、どんな人に対しても謙虚な方です。
普段施術の時も、趣味やグルメの話で盛り上がり、一切偉ぶる様子がありません。
お仕事のことも、うかがえば、業務上支障のない範囲でお話してくださいます。
ある日、私がある方と企画していたイベントの開催が中止になった旨をKさんにお伝えしました。
するとKさんからは、このような助言をいただきました。
「先生、ご縁は大切にした方がいい。何か問題があったわけじゃないんですね?」
いつもと声のトーンが違うと感じた私は、イベントが中止になったいきさつを丁寧に説明しました。
Kさんにはイベントの内容もお伝えしていただけに、心配してくださったようです。
何十年とビジネスの第一線で活躍されてきたKさんの言葉には重みがありました。
事実、そのイベントが中止になったのも、人間関係が根底にあったのです。
何をするにも、人と人との信頼が大切です。
Kさんもほんのちょっとの会話の中から、その状況を察していたのかもしれません。
「例えその時はビジネスでご縁がなかったとしても、繋がりは大切にした方が良いですよ。相手から一方的に断られるのならば仕方ないこともありますけどね。時間が経てばまたご縁が繋がることもよくありますから」
そうやって何気ない会話のなかで、ビジネスやプライベートにおける人と人との繋がりの大切さを教えてくださいました。
人との繋がりを、人脈という言葉で表現することがありますが、デキる人に共通するのは、人と人を繋ぎ、その繋がりの輪を大切にしている点です。
「この人とこの人が出会うといいんじゃないかなぁ」
「化学反応が起こるんですよ」
「大切な友人同士を紹介するのが好きなんですよ。嬉しいですね」
先日のテレビ番組で、タレントの小栗旬さんが、友人同士を紹介し、繋がりを作っている、とおっしゃっているのを拝見しました。
彼が紹介した友人同士は仲良くなり、仕事やプライベートでも良い関係性を持っているそうです。
時には彼が嫉妬してしまうくらい仲良くなることもあるんだとか。
とても素敵なことだと思います。
普段、私が親しくさせていただいている方にも、このような方が多くいらっしゃいます。
一緒に食事に行けば、必ず私を大切な方に紹介してくださいます。
そして、良いものや必要な情報があればシェアしてくださるのです。
ヨガが「結合」という言葉を意味するように、私たちは人だけでなく、山や川、草木、動物といった自然をはじめ、常にさまざまなモノゴトと繋がり合っています。
それは目に見えるものばかりではありません。
もし、あなたが今取り組んでいることで、期待していたような数字や結果が表れていなくても、その努力や経験は決して無駄にはなりません。
ヨガのいう「調和(ダルマ)」にかなった行い、つまり自分に正直に、人の迷惑にならない生活や努力を重ねていれば、あなたは「徳」を積んでいることになります。
一方で、「調和(ダルマ)」に逆らった行為によって「不徳」を積んでいけば、いつか自分にその結果も返ってきます。
先日、ある俳優さんが「不徳の致すところでございます」という言葉を何度も使って謝罪をされていました。
よほど自覚があったのでしょう。
誰にでも間違いはあるものです。
組織の中で働いている人は尚更、「調和」にかなった行いが求められることと思います。
何でも自分だけの力で成し遂げている、と考えてしまうのは思い上がりです。
また、生きていれば「自分だけがなぜこんなに辛いのか、苦しいのか」と感じることもあるでしょう。
ただ、そういった時こそ、世の中に起こるすべての物事が変化し動いている、ということを思い出して下さい。
ひと時も同じ状態に留まることはないのです。
目に見えなくても私たちはお互いに関わり合い、反応し合っているのです。
そう考えると、どんな時も、「自分だけ」ということは有り得ないのです。
また、自らが積んできた「徳」「不徳」に関わらず、すぐに表れる結果もあれば、そうでないものもあります。
大切なのは、見えない繋がりを信じて、今という瞬間を大切にすることなのです。
『デキる人は、ヨガしてる。 (Business Life)』 (クロスメディア・パブリッシング) |