「デキる人は、ヨガしてる。」(著:石垣英俊、及川彩)より
デキる人たちはヨガが習慣化されている
私は毎日多くの方に接する中で、ある時から「デキる人」たちの思考や態度、習慣が、ヨガ哲学が教えてくれることと、何ら変わりがないと考えるようになりました。
ヨガには『ヨーガ・スートラ』と『バガヴァッド・ギーター(以下ギーター)』という2大経典があります。
『ヨーガ・スートラ』が出家のヨガといわれている一方、『ギーター』は在家のヨガ、日常生活で行えるヨガの経典として、今なおインドで広く親しまれています。
『ギーター』は、道徳的な日常生活の「実修」に専念する「カルマ・ヨーガ」というものを中心思想としています。
「カルマ・ヨーガ」は、ポーズや呼吸法、瞑想をしなくても行うことができる生き方のヨガといえます。
デキる人たちと接していると、こういった経典に基づくヨガの哲学を学んだかのように、実に毎日を自然体で過ごしているように見えます。
ここでは、ヨガ哲学が教えてくれる智慧と、「デキる人」たちの思考や習慣を、私たちなりの視点でヨガ的な習慣としてまとめました。
この習慣を実践することで、あなたの心は一変し、自然体の自分にいつでも戻ることができる、ニュートラルな感覚を取り戻すことができるでしょう。
対象を常に「自分」に置く
ヨガとは、「心のはたらきを止滅させるもの」であることは、先述しました。
自分の心をコントロールし、制御することができれば、この世から苦しみはなくなるということです。
私たちが不快な気持ちになったり、ストレスで悩まされるのは、全て「比較する心」と「ジャッジする心」があるからです。
例えば、同期入社の同僚が自分よりも早く出世をした時、あなたはどう思いますか。
他人の成功や幸せを目の当たりにした時、心には何かしらの波が立つことでしょう。
頭ではわかっていても、焦る気持ちや羨む気持ちを抑えることは中々どうして難しいものです。
ここで意識したい心の習慣は、対象を常に「自分」に置く、ということです。
自分の心に嘘をつく必要はありません。
無理をして心をコントロールすることは逆に苦しみに繋がります。
自分の気持ちを押さえつけず、他人の成功を喜べないのであれば、そう思っている自分自身を客観的に見つめてみるのです。
彼の成功は彼の成功であり、彼女の幸せは彼女の幸せです。
それは揺るぎないことです。その上で、自分はどうありたいか、を考えてみるのです。
ヨガでは、自分が変わらなければ、見える世界は変わらないと考えます。
デキる人たちは、誰かと自分を比較したりもしません。人を批判することもなければ、高慢になることも、かといって卑屈になることもない。
いつも対象を自分に置いていて、客観的に自分を見つめ、ありのままを受け入れる。
この習慣が身につくと、周りの変化に惑わされていることが無意味に感じられ、今、自分がすべきことが見えてくるようになります。
悩んだり、苦しんでいたことが、大したことではなかったことに気づくかもしれません。
実際に「対象を自分に置く」習慣を身につけていた友人の話をしましょう。
大学のインターン試験で、40人以上いた生徒のうち、私を含めた6人だけが合格となりました。
運よく合格できた私は安堵していたものの、合格できなかったクラスメイトのことを考えると、心から喜べずにいました。
そんな時、クラスメイトの1人が、私の側に来て、こう語りかけたのです。
「おめでとう、すごいよ!やったね!俺はダメだったけど、次がんばるわ」
キラキラと輝いた彼の目を見れば、それが本心であることは一瞬でわかりました。
彼は私のことを、心から祝福しにきてくれたのです。
きっと彼は自分がすべきことをわかっていたのでしょう。
彼は私のことを「敵」や「蹴落とすべき存在」と捉えてはいませんでした。
後に彼は努力を重ね、試験にも合格し、彼が後日開業した治療院は盛業して多くのお客様の支えになっていると聞きます。
対象を常に「自分」に置く、という習慣が身につくと、自分には敵がいないということに気づきます。
周りがどうではなく、起こる出来事はすべて自分次第なのです。
自分次第で世界が変わる、世界と自分が同じであることをヨガでは、イーシュヴァラ(世界)=自分/梵我一如(=自分と世界・宇宙が同じであるとする考え)と考えます。
自分がどうあるか、何をすべきか決めるのは自分自身です。
大事なのは、今自分が何をしたいのか、自分がすべきことは何か、自分がどうあるべきかを明確にし、一つ一つ丁寧に行っていくことです。
そうしていると、他人の成功を羨んだり、悔しいと思うことは自然となくなっていくはずです。
そして、人の成功を自分のことのように喜ぶことができるようになります。
なぜなら、自分のすべきことが明確になると、周りの人は敵ではなくなるからです。
『デキる人は、ヨガしてる。 (Business Life)』 (クロスメディア・パブリッシング) |