「部署の雰囲気が悪い」
「上司との関係がうまくいかない」
など、組織の抱える様々な要因が、部下に疲労や不安といった「マイナス感情」を発生させます。やがて、メンタル不調を引き起こし、離職・休職につながることも。
そこで、書籍『「辞める人・ぶら下がる人・潰れる人」さて、どうする?』(上村紀夫著)から、社員のメンタルヘルスに対処していく方法を、ケーススタディを用いて紹介していきます。
1)とあるケース:細かすぎる指導にストレスを感じる部下
限度を超えるとただの窮屈ーマイクロマネジメントによるマイナス感情の蓄積ー
企画職・Bさん(27歳男性)
2ヶ月前に企画部に異動。自分で考えて働ける“自主性”があるタイプ
Bにとって企画職ははじめての経験。部下の仕事を細かく見ている、ということで社内でも評判の上司Zの下で働くことになった。Zは評判通りで、部下からの報告をしっかりと聞いたうえで具体的な指示を出してくれるため、やるべきことが明確になり、Bは働きやすくなったと感じていた。が、次第に業務を細かく決められることが精神的圧迫になり、働きづらさを自覚するようになった。それが半年ほど続き、仕事のやる気が低下。気持ちの落ち込みも自覚するようになり、「干渉が行き過ぎている。これはパワハラじゃないか?」と思うようになった。
2)マイクロマネジメントとは
業務指示をしっかりできる上司は素晴らしいのですが、その指導・監督が細かすぎることを「マイクロマネジメント」と言います。
このスタイルのマネジメントが必ずしもダメだというわけではありません。「業務指示が明確で動きやすい」とプラスに評価されることもあります。
しかし、マイクロマネジメントは時間の経過に伴って、多くの部下にとって悪い影響も与えていくことになります。
3)部下が「パワハラ」と感じる原因
常に上司の目を意識し、「何を言われるのか」とビクビクしながら仕事を進めていくような状態がストレスとなります。次第に、「自分の意見は関係なく、言われたことを忠実にやらなくてはいけない」と感じ、自身の考えを持たず、機械のように業務をこなさなくてはいけない状況に陥ります。
こうして「働きづらさ」が増していくと、「あの上司は嫌いだ」と公言するなど、上司との人間関係は悪化し、中にはマイクロマネジメントをされていることについて「パワハラを受けている」と言う社員すら出てきます。結果、やる気の低下や離職が起こります。
4)上司がすべき3つの現場マネジメント
このケースの対策を考える際には、「マネジメント3要素」の理解が重要となります。
マネジメントに関する理論はこれまでもたくさん発表されていますが、私はマネジメントを次の3つの要素に分けることをおすすめしています。
- 業務管理: 目標設定や業務計画・業務指示・進捗管理などが入ります。
- 評価: 部下の評価を行い、それを伝えることもマネジメントの一つです。
- 精神的サポート:メンタルヘルスに関するラインケアはもちろんのこと、キャリアサポートや「1on1(ワン・オン・ワン)ミーティング」も含まれます。
5)会社側の対策:1on1ミーティングの導入
業務管理の一つの型であるマイクロマネジメント。これによるマイナス感情の蓄積を回避するためには、①業務管理の型を変えるか、③精神的サポートを増すか、二つの方法があることがわかります。
後者では、精神的サポートについての実践的な管理職教育や1on1ミーティングの導入を検討していくことになります。1on1ミーティングは、上司と部下が1対1で面談し、表面的ではない信頼関係を築くことで、失敗も含め自然体の自分を見せられる「心理的安全性」を部下に与え、成長を促すことを目的として行います。これをマイクロマネジメントが起こっている現場だけに使うのではなく、全社的に活用することで、自発的に考えて動く社員がたくさんいる「活気ある組織」に近づきます。
6)管理者側の対策:「部下が上司に相談できる関係」の構築
マネジメントにおいて最も大切に思ってもらいたいこと、それは「部下の感情に関心を持つこと」です。管理職の方は、部下の業務と精神状態の両面をサポートする役割を自身が持っていることを再認識し、1on1ミーティングなどで部下との関係構築に臨んでみてください。
部下の感情を考慮した際に、マイクロマネジメントが適切なマネジメント方法ではないと感じた場合には、マネジメント方法の見直しが必要となります。
部下本人は報連相の「相談」を心がける
報連相では、結果の報告や進捗状況の連絡も重要ですが、最も大切なのは「相談」です。自分で考えることを放棄せず、業務の改善を提案・相談するように心がけていれば、一方的に指示を受けるだけでなく。自身も業務の推進に積極的に関与できるチャンスが生まれます。
なお、相談の際には必ず次の4つを、それぞれ明確に分けて伝えることが大切です。
何が起きているか(事実の報告)
どうしてそうなっているのか(自分なりの分析)
自分はこうしようと思う(対応法の提案)
今してほしいことを伝え、意見を聞く(何をしてほしいのかを伝える)
自力で何ができるのか、その探求を放棄してしまうと、「働きがい」や「働きやすさ」を手に入れられる可能性は一気に下がってしまいますし、その逆もしかりです。