プレゼンティーイズムとは?原因となる症状
「プレゼンティーイズム/presenteeism(疾病就業)」とは、従業員が職場に出勤しているものの、心身に様々な健康問題を抱えていて業務パフォーマンスが低下している状態を指しています。
原因となる健康問題
- VDT症候群、眼精疲労
- 頭痛(偏頭痛など)
- 首や肩のコリ、腰痛
- 花粉症
- メンタル不調
その他、二日酔いや月経不順などもプレゼンティーイズムの要因です。一時的な不調ですぐに改善できる症状もある一方、うつ病などのメンタル不調や慢性的な頭痛の場合、業務に支障を来す状況が長期間続いてしまいます。
アブセンティーイズムとは?
プレゼンティーイズムに対し、従業員が体調不良やメンタルヘルス不調で会社を欠勤、休職することを「アブセンティーイズム/absenteesim」と呼びます。職場、チームに欠員が出ることになるので、従来はアブセンティーイズムの予防・対策が重要視されてきました。
見過ごせないプレゼンティーイズムによる損失
しかし、アブセンティーイズムよりも、従業員が休まず働いてはいるプレゼンティーイズムの方が企業の生産性低下に大きく関わっていることがわかってきました。
ストレス解消に毎日の晩酌が欠かせない
睡眠不足で勤務中ずっと眠い。
目の疲れ、肩こりでデスクワークに集中できない。
在宅勤務になってから猫背が悪化した。
眠気覚ましや気晴らしのためにタバコ休憩に頻繁に行ってしまう。
あなたは心身ともにベストコンディションで仕事に取り組めているでしょうか。設備やマニュアルだけでなく働く人の健康状態も業務生産性のロスをつくり出す原因なのです。
企業にとっては医療費を上回るコストに
米国の商工会議所によるパンフレット(Workforce Healthy 2010 and Beyond)※1では、米国のある金融関連企業における「健康関連コスト(=従業員の健康問題によって企業が被るコスト)」の全体構造が示されています。その中で医療費等の直接費用が全体の4分の1程度を占める一方、プレゼンティーイズム・アブセンティーイズムによる生産性の損失(間接費用)は、約4分の3を占めています。
また、米国のある研究※2では「過度なストレス」「喫煙」「糖尿病」などの健康リスク数が増えるほど、労働生産性(アブセンティーイズム・プレゼンティーズム)の損失割合が上昇することも示唆されています。
プレゼンティーイズム解消のカギ「健康経営」
プレゼンティーイズムを解消し組織への悪影響を抑えるには「従業員の健康は従業員自身で管理するもの」という従来の意識から脱却しなければなりません。その上で重要になる戦略が「健康経営」です。
健康経営とは?
健康経営とは、従業員の健康維持・増進に向けた取り組みが将来的な企業の収益性等を高めるための投資であるという考え方のもと、従業員の健康を経営的視点でとらえ、その管理に戦略的に取り組むことです。
日本は、少子高齢化によって社会保障費の増加や労働人口の減少に悩まされています。政府はこれらの課題解決のために、健康寿命の延伸による「生涯現役社会」の構築を目標に掲げており、企業に従業員の健康維持・増進に向けた取り組みを推奨しているのです。企業側が健康投資(具体的な取り組み)を通して、組織の活性化、企業の業績向上・株価上昇を実現するためには「健康関連コスト(従業員の健康問題によって企業が被るコスト)」の抑制、つまりプレゼンティーイズムの解消が不可欠になります。
※健康経営について詳しくはこちら
健康経営とは?メリットや導入ステップをわかりやすく解説!
プレゼンティーイズムの対策方法と具体例
自社の健康課題やプレゼンティーイズムの蔓延度を把握し、具体的な解決に向けた取り組みにつなげていくにはどうすれば良いのでしょうか。プレゼンティーイズムに関する測定指標と、実際の取組事例を紹介します。
①生産性低下の測定指標・WHO-HPQの活用
自社でプレゼンティーイズムがどれだけ生産性に影響しているのかをチェックする方法として、世界保健機関(WHO)がハーバード大学と共同で開発した「WHO-HPQ」という質問票があります。この質問票を活用することで、把握しづらい「生産性」を見える化することができます。「WHO-HPQ」中のプレゼンティーイズムに関する質問は以下の通りです。
WHO/HPQのプレゼンティーイズム に関する質問項目※3
②健康経営優良法人2020認定企業の取組
実際にプレゼンティーイズム解消にアプローチしていくには、まずは産業医などと連携して自社の従業員が抱える健康課題を把握した上で戦略的に施策を進めていきます。
取組の例には
- 食生活・運動習慣に関する社内セミナーの開催
- マインドフルネス・ストレッチを実施
- ハラスメントやメンタル不調の相談窓口の設置
などが挙げられ、これらは健康経営を実践している企業の施策でもあります。
経済産業省発行の「健康経営優良法人取り組み事例集」より、実際に健康経営への取組が評価された健康経営優良法人2020認定企業の事例をいくつか取り上げてみましょう。
⚫ ナガオ株式会社
取り組みのポイント#1 健康の意識付け
【食生活の改善に向けた取り組み】
※その他複数項目にまたがる健康全般に関する取り組み
- システム上での問診や測定データ(血圧・体重等)を基に10分程度で分析される結果と個別アドバイスにより、将来の健康状態の予想が自動出力されるセルフチェックシステムを導入しています。例えば肥満傾向の人には食生活のアドバイス等が出され、生活習慣病予防への意識が変わってきました。
- 社員の健康年齢寿命を更に高めたいという社長の思いで、2018年から導入しました。
- 当初は希望制で始めましたが社内への口コミで広がり、現在9割以上の方が2ヶ月に1度活用をしています。
取り組みのポイント#2 活発な運動同好会
【運動機会の増進に向けた取り組み】
- マラソンは、多くの社員が実施していたことから2015年からナガオランナーズ(同好会)として部署の垣根を超え
取り組んでいます。会社として、4大会参加費やユフォーム作成費用を全額負担することでサポートしています。参加
人数は26名にのぼります。 - ソフトボールの活動では、地域の大会に出場しています。2年に1回は家族ソフトボール大会も実施しており、その大会では、子どもと一緒に参加できるイベント等を企画開催しています。
⚫ ネッツトヨタ山陽株式会社
取り組みのポイント#1 けんこうプログラム
【運動機会の増進に向けた取り組み】
- 社員に電子万歩計を携行してもらい、歩いた歩数を集計し、個人別・部署別実績を毎月、ニュース形式で公表しています。
時々、ウォーキングコンテストも実施し、楽しみながら継続して運動する環境づくりを工夫しています。
取り組みのポイント#2 社員食堂での健康意識向上
【食生活の改善に向けた取り組み】
- 本社社員食堂をみんなが笑顔でゆっくり食事できるようにリニューアルしました。カロリー別におかずをチョイスできるヘルシー仕出し弁当を提供したりもしています。
引用元:「健康経営優良法人取り組み事例集」経済産業省https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieiyuryohojin_jireisyu200327.pdf
※「健康経営優良法人」の概要はこちら
健康経営優良法人制度とは?認定のメリットや2021年認定基準を解説
改善に取り組むメリット
「健康経営優良法人取り組み事例集」では、企業が取組や認定を通して、従業員の定着率の上昇、自社の労働価値に合った人材の採用、自社のアピールなどの効果を得ることができたと紹介されています。
前述のように、世界各国の中でも医療費水準が高い米国において健康関連コストの最大要因としてプレゼンティーイズムが示されたことは見逃せない事実です。従業員の健康へ積極的に関与していく姿勢、「健康経営」への姿勢で従業員の業務パフォーマンスの向上に取り組めば、企業にとって組織の生産性の向上、間接的な医療費負担の削減といったメリットが期待できます。
対策を進める上での課題とは?
従業員の健康維持は最終的には従業員自身に委ねられるので、マラソンイベントや講習会などを開催する“だけ”では対策は空振りに終わる恐れがあります。プレゼンティーイズム 解消に実効性を持たせるには、社員一人ひとりの健康リテラシーの向上を支援できる社内環境をつくる必要があります。
また、昨今は新型コロナウイルス感染症(covid-19)の影響でジム利用や集団セミナーなど健康増進に向けた施策の一部は実施が難しくなる中、労働環境の急変で新たな健康問題も懸念されています。企業にはリモート勤務下でも従業員の健康を把握できる体制整備や、健康イベントのオンライン開催などの柔軟な対応も求められています。
参考:ウィズコロナの健康経営−テレワーク拡大下で健康管理にどう取組む
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◼️出典
※1「Healthy Workforce 2010 and Beyond」
※2「The Relationship Between Health Risks and Work Productivity」https://www.bdmscmeonline.com/common/documents/Health_&_Productivity_Management_(HPM)/Boles%202004%20the_relationship_between_health%20risks%20and%20work%20productivity.pdf
※3「データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン」厚生労働省保健局
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000171483.pdf