「一生太らない魔法の食欲鎮静術 食事瞑想のススメ」(著:松尾伊津香)より
食に対する嗜好は人それぞれ
甘いものや揚げ物など、好きな食べ物は人それぞれです。
かつて一緒に住んでいた女友達と私の場合も、食に関する趣味嗜好がまったく違いました。
その子は、食いしん坊の私と正反対で、食欲が強くありません。とくに私を驚かせたのは、甘いものへの欲求が極端に少ないことです。貰い物のお菓子を食べ尽くすのは大抵、私。
「食べても太らない体なのだから私の代わりにさっさと食べて欲しい!」
と思いながらも、仕方なく私が美味しくいただくというのが常でした。
そんなある日、彼女にも彼女の食を揺るがす食べ物があることを発見しました。
それはラーメンだったのです!
彼女は常に大量のカップラーメンをストックしていました。それは私にはいまいち理解できないことでした。人一倍、いや、人の3倍も4倍も食欲の強い私ですが、カップラーメンはあまり好きではありません。栄養面がどうとか、そういう問題ではなく、なんというか、近くにあっても手が出ないのです。
心を乱す「そわそわ食品」とは決別する
自分をそわそわさせる食べ物は人によってそれぞれあるもので、それは食欲の強さと関係ないのです。
誰にでも、そんな食べ物が必ずあります。
普通、食の好みは「嗜好」というのかもしれませんが、そわそわ感を生む食べ物は、さらにその上を行きます。
こうした食べ物が近くにあるだけで、明らかに自分の気持ちが乱されてしまうのです。なかったら気にならないのにあったら無視できない、という食べ物。
これを私は「そわそわ食品」と呼んでいます。
自分にとってのそわそわ食品がなんなのか。
これを見つけて普段の生活からできるだけ排除することは、苦しみを取り除く重要なポイントです。より具体的に見つけてください。
これらを取り除く一番のオススメ方法は、好き嫌いに関係なく、他人には堂々と「嫌い」と言ってしまうことです!
ちなみに「ダイエットを始めたから」はお勧めしません。なぜかダイエットが理由ではお菓子が入ってくる量が減らないからです。
余計なものは余計にもつと苦しみと欲を増幅させます。
つくづく食欲と心は同じだなと思います。
「コンビニ断ち」をしてみる
そわそわ食品は、家の中にしかないというわけではありません。むしろ一番問題なのが家の外、しかもあなたの通勤中にいくつもあるあの場所……。
そう、コンビニです。
コンビニこそ、「食べたい」というそわそわした気持ちを呼び覚ます、一番の強敵です。
正直、家の中の甘いものを排除するのは、そんなに難しいことではないのです。ある程度、自分で管理できるからです。でも、コンビニはそうはいきません。自分ではどうすることもできないし、コンビニはそこら中にあります。
もし、あなたのそわそわ食品がコンビニで売られているものだとしたら、単にその食品を排除するよりも、ずっとずっと難しいことだと思います。
だから私は「コンビニ断ち」をお勧めします。あなたの食欲を効果的におさえ、ダイエットを成功させるために、とても有効な手段と思います。
普通の人は、コンビニに入って悩みます。
「アイスを食べたいけど、サラダじゃないといけない。でも、やっぱりアイスが食べたい」
というように。
目の前に美味しそうなアイスがあるのにそれに勝てるほど、人間の意志は強くありません。これはあなたの意志の問題で習慣化できないのではなく、「選択ポイント」を間違っているからです。
コンビニ断ちのポイントは「入る前」
大事なのはコンビニに入ってからではなく、コンビニに入る前、です。
たとえば何かを食べたいとしたら、コンビニに入るかスーパーに入るか、を選択に置くのです。これなら、選択の苦痛が和らぎます。
「コンビニもスーパーも変わらないじゃない」
そう思うかもしれませんが、この2つはまったく違います。どういう具合に違うのかというと……?
コンビニは、甘いものや揚げ物を買うように仕向けられている空間です。なぜならターゲットが即食べられる人向けなので、「食べたい欲」を増幅させるように仕組まれているのです。
一方のスーパーは、そもそもターゲットからして違います。こちらが狙うは、主婦。もちろん甘いものや揚げ物、加工品も置いてありますが、スーパーの目的は「これもお得だし、買っといたほうがいいかな」を増やすことです。
こういった違いから、コンビニのレジ横には揚げ物があり、スーパーのレジ付近には乾電池があるのです。
コンビニを否定したいわけではないのですが、一生コンビニに走らされる人生ほど悲しいものはありません。ここは「胃」を決して、ではなく、「意」を決してコンビニ絶ち期間をつくってみてはいかがでしょうか。
塩分カットで塩分が足りない?!
ダイエット中に何か食べたくなるのであれば、それはもしかしたら、塩分不足によるものかもしれません。
「え、塩分って気をつけないと摂りすぎちゃうものでしょ?」
そう思った方もいるかも知れません。
もちろん、ダイエット中ではなくて普通に食べているという場合は、塩分の過剰摂取になりがちなので控えたいところです。でも、「やせたいから!」といってサラダばかりを食べていたり、食事が全体的に薄味になりすぎたりすると、塩分が足りなくなることがあるのです。
「体は、必要な栄養素が入っている食べ物を食べたくなる」と言われることがあります。
これが正しいのかはわかりません。でも、私たちには生きていくために欠かせない栄養素群(ビタミン、ミネラルなど)があり、それは無意識下できちんと管理をされている、というのは事実です。
その中で、最優先で管理されているものが「塩分」です。体に必要なミネラルのなかでも、塩分は最重要なミネラルであり体の浸透圧から消化機能、新陳代謝まで、様々な役割を果たしています。
ダイエット中の食事でこれらが失われて、さらに運動で汗となって流れてしまうと、塩分を補うために体から塩分摂取の指令が出ることがあります。体は「塩分をちょうだい!」という声を発しているのに、私たちが受け取るときには、ただの「食べたい!」に変換されてしまいます。この間違った受け取り方のせいで、食欲が暴れ出すこともあるのです。
帰り道の買い食いは「達成感」による快感
お客様の悩みで一番目立つのが、「帰り道の買い食い」です。
最近は食べ歩き文化も定着しているくらいですし、学生さんがコンビニの前でお菓子を食べていたり、お仕事帰りの方が肉まんを食べながら帰っていたりする姿も、珍しくなくなりました。それがマナー的にいいかどうかはさておき、食欲のプロとしては「食べ歩き最高! 美味しい!」という幸せな気持ちでやっているのなら、とくにとがめることはありません。
問題なのは、それが「やめられない苦しみ」になっている場合です。やはり、食欲に悩んでいる人は、買い食いをやめたいと思っていてもやめられず、苦しんでいるケースが多いように感じます。
私の肌感なのですが、こうした買い食いに関する悩みは、おそらく精神的なものが6割を占めています。その食欲にはかなりの衝動性があり、強すぎる方は、電車を1本遅らせて遠回りしてでも、お目当てのものを探して「食べる」を達成します。こうした症状が出るのは、満足感の問題ではなく、どうやら「達成感」が快感になっているようです。
仕事から解放され自由になると、今までかかっていたストレスをどうにか取り除きたくて買い食いを行うのでしょう。イライラしたときに甘いものを食べたくなるのと一緒ですね。
ストレス発散のための買い食いから抜け出すには
でも、この仕事帰りの買い食い、ちょっと変わった特性があります。
それは「こっそり食べることによる快感である」ということです。
堂々と食べればいいものの、なぜか公園でちょっと立ち寄って見られないように食べたり、暗い夜道で人に見られないようにこそこそ食べたりしたがるのです。食べるということ自体がそもそも快感ですから、それと同時に人に見つからずに食べられた、ということが、その人の達成感として快感になるのかもしれません。
やめられない買い食いの苦しみから抜け出すためには、これまでお伝えしてきた「食事瞑想」のステップを踏むこと。
(詳しくはこちら→「「よく噛めば満腹になる」の落とし穴。太る食べグセ、原因は「舌」にあり!」)
そして、「この衝動は、食欲の問題ではない。単にストレスを発散したくて、達成感を得たくて、食べたくなっているだけなのだ」と、自分自身に言い聞かせることです。
心のうちで、客観的に事実を説明すると、食欲に紛れて見えなくなっていた本質に気づくからでしょうか。
「自分はそれほどまでに仕事でストレスを抱えているのか」とショックを受けつつも、仕事のストレスをできるだけ軽減しようと、かえって意欲的になり、食欲も徐々に落ち着いていくのです。
『一生太らない魔法の食欲鎮静術 食事瞑想のススメ (Business Life)』 (クロスメディア・パブリッシング) |