姿勢。こんなにも人をドキッとさせる言葉はないのではないのだろうか。
「私は姿勢には自信があります」
姿勢の話の際にそう答えられる人は現代では少ない。それこそ、その専門家やプロアスリートなど日常的に体を動かしている人でなければ姿勢に自信があるなんてことはめったにない。なぜなら、現代のライフスタイルは姿勢が悪くなるようにできているからだ。
どんなにファッションにこだわっていても、大本の体が過度に太っていたり姿勢が悪かったら、その努力も台無しだ。
――どんなに高級な洋服を身にまとっていても、ファストファッションを着こなすスマートな体にはかなわない。――
初めまして、プロボディデザイナーの松尾伊津香と申します。
最近関わった『超「姿勢」力』という本でも書いているのですが、多くの男性が姿勢に関して悩みをもっています。
ということで、今回はビジネスマンに必要な姿勢矯正に関して伝えていきます。ここ数年で、現代に生きる人の姿勢はまた大きく変わりつつあります。それを進化というべきか退化というべきかはわかりかねますが、明らかにその様子は変わりました。
先日、いつもどおり疲労回復プログラムを終えた方が、ふとこのようなことをおっしゃっていました。
「私って首が前に出ているんですよね」
「そうですね、◯◯さん骨盤が倒れやすいですもんね」
「え、骨盤ですか?」
どうやら骨盤と首の関係が理解できてなかった様子。“骨盤が倒れているから首が前に出る”。今回はここを解説していていきましょう。
現代、首が前に出ている方はとても多いです。
これの問題点は、首ではなく、首をつかさどる中心部分にあります。まず背骨はこのようになっています。
見たことのある方が多いと思いますが、背骨はこのようにS字の形をしてバランスを取っています(左側が背中)。
身体は組織です。
ひとつの目的に向かって各組織が連動して動きます。どこかが動かなければ、どこかがそれを補います。それを繰り返して、ひとつの動き(目標)に対して体全体が力を合わせて動いていきます。おわかりでしょうか。
この仕組み、実は会社と一緒なのです。
会社は、行っているサービス(目標)を、いろいろな部署が力を合わせて作り出します。そして、ことを成すには、まずは会社の重役は動かずに、フットワークの軽い社員が動きます。
どちらが重要ということではありません。重役がいなくても困るし、現場で働いてくれているスタッフがいなくても会社は成り立ちません。両者が適切に動くから、会社は会社として円滑に運営できるのです。
体も同じなのです。
「まずは末端が動く」
体が動く場合、指先や腕・脚など小回りが利く末端で解決しようとします。それで解決できなければ、体全体で目標を解決しようとします。
例えば懸垂
最初に手のひらに力が入ります。しかし手の力だけでは上がりません。
今度は腕に力が入ります。しかし腕だけでは上がりません。
今度は首と肩に力が入ります。それでも上がらない場合、肋骨を締めておなか・背中に力を入れて胴体も動員して懸垂という動きを達成しようとします。
これが体の動きの流れです。
それを踏まえて、再度こちらをご覧ください。
背骨とは、体の中心であり、会社でいう本社のような部分です。いうなればエリートたちの集まりです。しかし、エリート軍団のなかでも、やはり重役と末端は存在します。
背骨は骨盤を重役として、そこから腰・背中、首にかけて末端になっていきます。仰向けに寝たときに首は左右に180度動きます。しかし、お尻をつけて座ったときに、おへそはほとんど動かないのがお分かりでしょうか。
首はくるくる動いてフットワークが軽いが、骨盤から腰周りはほとんど動きません(立っているときにおへそが横を向くのは、背骨が動いているわけではなく、お尻からももにかけて動いているのです)。
だから、腰よりも首・あごがいつも先に動くのです。
重い物を持ち上げようとしているこの男性。あごが上がっているのがおわかりでしょうか。
これは、腰に力が入っていないからです。
重い物を持ち上げるのは大変な作業です。しかし、重役である骨盤や腰は寝てしまっているため、末端である首が頑張らざるを得なくなり、すると、首の後ろに力が入り、上の絵のような姿勢になります。
しかし、いくら首が頑張ったところで限界があります。厳しい案件には会社全体が力を合わせて立ち上がらなければいけないのです。
ついつい会社の話に熱が入ってしまいました。言っておきますが、うちの会社の重役の方々はとてもいい方ばかりですよ。
話を戻して首が前に出ているということについて、つまりはこういうことです。
上の絵のように骨盤が寝てしまうから、首がバランスを取って前に出ざるを得ないのです。
さらにパソコンを用いての長時間勤務となると、顔がどんどん前に出ます。これが、首が前に出てしまう理由です。
今日からまた始まる一週間。パソコンと向き合うことも多いと思いますが、背中が丸まってしまわないようにまずは骨盤を立ててあげてください。
次回は、その骨盤の効率いい立て方をお伝えします。
また来週!
疲労回復専門ジムZERO GYM エグゼクティブプログラムディレクター。『一生太らない魔法の食欲鎮静術~食事瞑想のススメ~』著者。ミスター&ミスモデルジャパン2016 日本大会「ミス・モデルジャパン ガールズ部門」3位。福岡県福岡市博多区出身。修猷館高校、関西学院大学文学部総合心理科学科卒業。在学中、 心理学・精神医学を学ぶ傍ら、ヨガ哲学やメディテーションに出合う。アメリカ留学にてその知識を深め、帰国後は銀座でヨガインストラクターとして勤務。その後、全国に50店舗以上展開する女性専用ダイエット専門ジムShapes International の六本木本店店長兼スーパーバイザーに。現在は日本初の疲労回復専門ジム「ZERO GYM」で、働く人の心身のコンディションを整える指導をする傍ら、食欲や食事制限・リバウンドに苦しむ人たちの悩みと日々、向き合っている。
https://matsuoitsuka.com/
◆当記事はアエラスタイルマガジン(運営:朝日新聞出版社)からの提供記事です。(元記事公開日:2017年12月11日)