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早期離職する理由とは?新卒が抱えるストレス原因を産業医が解説

新卒者のストレス耐性が低い、離職率が高い…など、若手がメンタル不調であったり、定着しにくい傾向にありませんか。

問題の原因が曖昧なままでは、人材流出を防ぐために実行した施策も空振りに終わっています。

そこで、今回は書籍『「辞める人・ぶら下がる人・潰れる人」さて、どうする?』(上村紀夫著)から、離職や心身の不調による離脱がどのように起こるのか、その原因とメカニズムを解説します。

メンタルヘルスが原因の離職は“対策できる”

離職の中でも、心身コンディションの低下による離脱やその前段階で起こる消極的離職は、会社としては見過ごせない問題となっています。

離職対策をするように、と指示を受けている人事担当の方は、同時にメンタル不調者の発生についても対策を練らなくてはいけなくなっていることでしょう。

それについては、私は常に離職とメンタル不調は同時に取り組めるということを提唱しています。

 

これは、「新卒者の早期離職」を例にとるとわかりやすいです。

 

新卒者が早期離職に至る理由とメカニズム

①環境の変化でストレスが増加

まず、学生から社会人になることが大きな変化となります。しかも、変化は重なっていきます。引っ越しをしたり、慣れない土地で一人暮らしを始めたり、家族や友人と顔を合わせる時間もない、早起きしなければならない、スーツを着なければならない、仕事では知らないことばかり……。このような変化がストレスとなります。

 

②理想と現実のギャップで価値観がズレていく

入社した後に気がつく「理想と現実の違い」も大きなストレスになります。

学生時代には見えなかった現実を知り、「こんなはずではなかった」と感じることは多々あるでしょうが、そこにあまりも大きな違いがあると、学生時代に想定していた夢や働く目的と、実際に社会人になって日々過ごすうえで大切にしたいことがズレていき、『労働価値のミクロシフト』が起こります。

 

③上司・先輩・同僚との人間関係が悪化

自分が描いていた「働く姿」と現実とのギャップにより、入社早々に、「働きがい」が低下していきます。「こんなことを自分はしたくて入ったわけではない」という気持ちから、マイナス感情が蓄積し、周囲の先輩や同僚との人間関係などについても不満が生じ、「働きやすさ」が低下します。

 

この段階で、「働きがい」の低下から「積極的離職」をする人や、「働きやすさ」の低下から「消極的離職」をする人が出てきます。

 

【増加傾向】ストレス耐性が低い若手社員

また、メンタルダウンによる離脱が起きたとき、その過程を辿ってみると、新卒早期離職のもう一つの側面が明らかになります。それが教育現場における理不尽経験の減少による、ストレス耐性の低下傾向です。ストレス耐性とは簡単に定義すると、ストレスを感じやすいかどうか、もしくは感じたときに影響が出やすいかどうかの傾向のことです。

この十年ほど、理不尽経験をしてこなかった学生が社会人になった瞬間から理不尽を味わうこととなり、「働きづらさ」から「心身コンディション」の悪化での「離脱」を起こすケースが多いです。

 

心身コンディション・働きやすさ・働きがいの低下に注意

マイナス感情の蓄積でスタートし、「積極的離職」「消極的離職」「離脱」が結果として出ていると考えると、離職とメンタルダウンは個人活性(心身コンディション・働きやすさ・働きがい)の低下の出方の違いでしかないことがわかるかと思います。

このように、マイナス感情の蓄積は、個人活性3要素(心身コンディション・働きやすさ・働きがい)に作用し、その結果離職やメンタルダウン、やる気の低下といった個人活性の低下が引き起こされます。個人レベルの問題であれば会社への影響は限定的ですが、場合によっては病が伝染するかのごとく周囲のマイナス感情にも影響を及ぼし、やがて組織課題として浮き上がってきます。

 

まとめ:問題の原因を理解してメンタルヘルス対策につなげる

蓄積による現象を深刻化させないためには、まず何が原因となり現象を引き起こしているのかを根本から理解する必要があります。それは、業務負荷・人間関係などの細かい要因へのアプローチをしなさいというわけではありません。個人活性3要素のどこが傷み、それゆえにどの要素に影響し、現象がもたらされたのかという「マイナス感情の蓄積プロセス」を理解するということです。

 

それが、対策の具体案や優先順位を明確にすることにつながります。そして、離職やメンタルダウン、やる気の低下といった会社を悩ませる現象を低減させるだけでなく、会社と社員のココロに溝を生んでいる空ぶり施策からも遠ざけるのです。

 


 

書籍紹介:『「辞める人・ぶら下がる人・潰れる人」さて、どうする?』

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