人の体は年々老化していきますが、老化するにはその理由があります。年々胃腸が弱くなり、皮膚にしわが寄り、血管が固くなって蛇行し、視力が落ちていく。これは自然にそうなるのではなく、体の中で組織が何らかの変化を起こしているためです。この体の老化のきっかけになるのが「糖化」という現象です。
1912年フランスの化学者マヤールが、糖とたんぱく質を加熱すると褐色あるいは黄色い物質ができることを発見しました。この褐変反応は「メイラード反応」(マヤール Maillard のローマ字読み)と呼ばれます。
小麦粉(糖)と卵(たんぱく質)をミックスしてホットケーキをつくるとキツネ色(褐色)になる現象や、肉や魚やタマネギを焼くと、焼き目や焦げ目が茶色になる現象もメイラード反応です。このメイラード反応は特別な酵素などによって引き起こされる反応ではなく、加熱したり、低温でも長期に糖と接触しているだけで起こります。
この糖化の反応は実際に体の中でも生じます。もっとも有名な体内の糖化は赤血球の中に含まれているたんぱく質であるヘモグロビン(Hb)の糖化です。Hbが糖化したものはHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)と呼ばれ糖尿病の進行度の指標として使われています。もちろん正常な状態であっても血液の中にはブドウ糖が存在しますので、HbA1cはゼロではなく5%前後です。糖尿病の人は血糖値が高いため、糖化するHbが多くなり、その正常値を超えて高値になります。HbA1cが6.5%を超えていれば糖尿病となります。
血液の中にブドウ糖が流れ続けていると、ブドウ糖は体内のたんぱく質のアミノ酸(主にリジン、アルギニン)だけでなく、脂質やDNAにも結合します。
糖が結合する段階は3段階に分かれます。
まず糖と接触して数時間以内に反応してシッフ塩基と呼ばれる化合物ができます。シッフ塩基は血糖が高ければ高いほどたくさん合成されます。
第二段階としてシッフ塩基は数日でアマドリ転位生成物という物質に変わります。HbA1cはアマドリ転位生成物の代表です。アマドリ転位生成物はシッフ塩基と比べて糖と強固に結合していますが、まだこの段階では元の状態、すなわち糖と分離した状態に戻ることができます。
最終段階でアマドリ転位生成物が蓄積すると、複雑な反応を起こし強固に絡み合った糖たんぱく質が形成されます。この過程は数週間から数カ月かけて反応します。この段階の生成物を終末糖化産物(AGEs)と呼ばれ、AGEsが一旦形成されると分解されることはありません。
AGEsが蓄積されていくと・・・

血糖が高い状態が長く続くと体内にどんどんAGEsが蓄積していきます。組織がAGEsとなって変性していくと、皮膚や骨に存在するコラーゲンや眼の水晶体のクリスタリンなどのたんぱく質は変性します。その結果、肌の張りと弾力性がなくなり、骨の質が劣化したり、白内障が高度に進行します。糖尿病は進行すると3つの大きな合併症を引き起こします。
それは神経障害、網膜障害、腎障害です。進行すればアルツハイマー病、視力障害、腎不全となります。糖尿病と診断される人の多くは動脈硬化が進み、高血圧となっていることもあり、この病状の悪化を加速させます。現在、失明および人工透析の原因の1位はともに糖尿病です。
多くの糖尿病患者は病状が進行するにつれて、もっと対策をしておけばよかったと後悔します。そんな重篤な糖尿病患者でも最初はちょっと血糖値が上がっているだけだったのです。
血糖上昇に伴う体の損傷を進行させないためには、血糖が上昇していない時間をなるべく長く維持することがAGEsの蓄積を防ぐ上で重要です。そして食事から供給されたブドウ糖をすばやく低下させる能力を取り戻していかなくてはいけません。
『不調を治す 血糖値が下がる食べ方』(著:石黒 成治)より
<併せて読みたい>
