「デキる人は、ヨガしてる。」(著:石垣英俊、及川彩)より
メンタルストレスの時代
ストレスという言葉にあなたはどんな印象をもちますか。
あなたにとってストレスを感じるのはどんな時でしょう。
上司との軋轢、同期との昇進争い、同僚との価値観の違いなど、職場内だけでも人間関係に悩まされることは多々あることでしょう。
先日、NHKで放映された「キラーストレス」という番組が話題になりました。
「ストレス」というものが、病気や不調の原因の主たるものであると、多くの方に認識されてきた証拠だと思います。
カナダ人生理学者のハンス・セリエ博士が「ストレス」という体の反応と、「ストレッサー」というストレスを引き起こす刺激について定義したのはまだ数十年前、比較的最近のことです。
ストレスを引き起こす原因は、寒さや暑さ、騒音といった物理的なもの、薬物などの化学的なもの、感染などの生物的なもの、怒りや不安といった心理的なもの、これらの4つに分類されます。
ただ、現代のストレスとは、大半は対人関係における心理的なもの、つまりメンタルストレスを意味しているといっても過言ではありません。
古代中国においても、病気や不調の主な原因は、何よりも自らの感情の乱れによるものと考えられていました。
モノや情報がない時代でも、人は対人関係において悩み、苦しんできたことがわかります。
ストレスがなくなるときは訪れる?
先日、あるカルチャーセンターで「背骨」に関する講座をした際、「背骨を整えて、体が変わったらメンタルストレスはなくなりますか?」という質問を受けました。
とても興味深い質問です。
残念ながら、メンタルストレスは、背骨はもちろん、体が変わるだけではなくなりません。
もちろん、肉体が変わることで、考え方や感情の表れ方に変化が起こります。
体がラクで良い状態の時は、ちょっとしたことで過剰反応を起こすことがなくなります。
感情も穏やかに保つことができるものです。
しかし、常に肉体を完璧な状態に保つことは簡単なことではありません。
結局のところ、物事の受け止め方や思考を変えなければ、ストレスは次から次へと表れてくるのです。
本当の意味でのストレスフリーとは、肉体のみならず、思考が変化し、世の中の見え方が180度変わった時におとずれるものでしょう。
良いストレスと悪いストレス
ストレスには、良いストレスと悪いストレスの2種類があることをご存知でしょうか。
私たちが成長していくために必要な良いストレスを「ユーストレス」、反対に心身が不調に陥ってしまうような悪いストレスを「ディストレス」といいます。
私たちが普段ストレスと聞いてイメージしやすいのは「ディストレス」です。
ヨガ講師としても知られるケリー・マクゴニガル氏は、著書である『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』(大和書房)で、「〝ストレスは害になる〟という認識が浸透しているが、それとは異なる実態が研究によって明らかになっている」と主張しています。
つまり、ストレスは害になることもあるが、ならない場合もあるということ。
例えば、それほど危険でないストレスの場合、脳と体は「チャレンジ反応」という状態になり、プレッシャーの中で力が湧いてくるといいます。
いわゆる「フロー」の状態にある人に、このような特徴が見られるといいます。
いずれにせよ、ストレスが健康に悪いという思い込みは、ネガティブな反応を起こしやすくなります。
同じような外的刺激であっても、人によってユーストレスにもディストレスにもなり得る。
同じ物事が、その人の状態や捉え方、受け取り方次第で、ポジティブにもネガティブにもなるわけです。
例えば、上司から課せられたタスクが、人によっては成長を遂げるためのポジティブなチャレンジになるのに、受け取り方次第では苦痛としかいいようがないネガティブで一方的な命令になってしまう。
前者は、上司にチャンスをもらえた、成長できている、と捉えているのに対し、後者はどうして上司は私のことを理解してくれないのだろう、嫌われているのではないか、と受け止めてしまう。
そしてこういったネガティブな感情は、心身に大きな負担となることは明らかでしょう。
ヨガでストレスが消える
時々、ヨガをすることで「ストレスが消える」「ストレスに打ち勝つ」といった言葉を耳にします。
確かにヨガをすることで免疫力は高まります。
そう考えれば、あながち間違いというわけでもありませんが、存在するストレスがパッと消えるわけではないですし、そもそもストレスは打ち負かすべきものでもありません。
ただ、ヨガを実践することで、物事を受け止める心と体が変化するので、心身の変化から、物事の捉え方や受け止め方が変わっていくのです。
そうすると、今まで大きなストレスと感じていたことを、ポジティブに受け止めることもできるようになるでしょう。
苦手だった人の嫌な部分だけを見るのではなく、良いところを見つけようとするうちに、段々相手の苦手な部分さえも可愛らしく見えてくるように。
そういった意味では、今までいわゆるストレスと感じていたものが、ストレスではなくなる、といったことも起こってくるのです。
『デキる人は、ヨガしてる。 (Business Life)』 (クロスメディア・パブリッシング) |