「デキる人は、ヨガしてる。」(著:石垣英俊、及川彩)より
なぜ今、「ヨガ」なのか?
仕事ができるビジネスパーソンに共通すること、それは自己管理能力の高さでしょう。
ひと昔前は、体調も顧みず、日夜寝る間も惜しんで働くのが美徳とされた時代もあったように思います。
会社によっては、まだそういった古い体質が残っているところもあるかもしれません。
しかし、時代の変化と共に企業の在り方や、働く人の意識は確実に変わってきていると感じます。
このような変化は、治療院に訪れるお客様を見ていてもわかります。
以前は、来院される方の中心は主婦や高齢者の方で、働き盛りの男性の方はギックリ腰や四十肩のように、よほど生活に支障が出なければ来院されることはありませんでした。
それが近年は、男性でもヘルスケアや心身のメンテナンスとして治療院を利用される方も増えました。
メタボリック・シンドロームやロコモティブ・シンドロームといった言葉もよく聞くようになりましたし、ランニングやジム通い、グルテンフリーダイエットを日課にするなど、健康志向も確実に高まってきていると感じます。
「徹夜はするな。睡眠不足は仕事の敵だ。」
男性ファンが多いことでも知られるスタジオジブリの映画「紅の豚」で、主人公ポルコが徹夜で飛行機の設計をしていたフィオ(女性設計士)を気遣い、言った名台詞です。
とはいえ、ビジネスパーソンにとって残業は全くしないというわけにもいかないものだと思います。
しかし、残業時間ばかりを増やして労力を費やしても、それが必ずしも成果につながるわけではないでしょう。
やるべきときに、やるべきことを、やる。
メリハリをつけて、きちんと自分と家族の時間を大切にする、自分の心身や自分を支えてくれる人を労わる意識が必要になってきます。
Apple創業者、故スティーブ・ジョブズ氏は禅やインド哲学、ヨガにも傾倒していたと聞きます。
「自分を丁寧に扱うこと、そして他人を大切にすること」
彼が余命幾ばくもない中、最後に語ったとされる言葉は、まさにヨガ的なものでした。
限られた時間の中で成果を生み出しながら、自分も他の人も大切にできる心の余裕を持つ。
ビジネスの世界にもまさに、「ヨガ」の智慧が活きる時代になってきたのだと、私は考えています。
一流アスリートも実践する「ヨガ」
ヨガがアスリートに有益であることを示したのは、2014年のサッカーFIFAワールドカップが記憶に新しいところです。
優勝したドイツ代表はヨガをトレーニングに取り入れていました。
当時のドイツ代表のヨアヒム・レーヴ監督の狙いは、フィジカル面だけでなくメンタル面の強化にあったといいます。
なぜなら、彼自身が「Jogi(ヨギ)」(ヨガをしている人という意味のドイツ語)という愛称で親しまれており、ヨガの素晴らしさや効果を知っていたからです。
実際にピッチ上で選手たちの集中力は90分間途切れることがなく、攻勢に転じていても平常心を保ち、劣勢になっても常に勝機をうかがう強い気持ちを保ち続けていました。
アスリートがヨガに注目する理由
私の親しいヨガ指導者たちも、以前からもっとアスリートにヨガが普及することを望んでいました。
肉体の柔軟性を高めることで怪我を防ぎ、パフォーマンスを向上させることができると信じていたからです。
また、普段から呼吸を整え、心身を安定させることで、どんな逆境でも乗り越えられるタフな精神力が身につくことを知っていました。
ですから、ドイツ代表のワールドカップ優勝は、ヨガ指導者にとってもヨガの効果を証明する何よりの出来事になりました。
サッカー日本代表で、イタリアのインテル所属の長友佑都選手がヨガを独自のトレーニングに取り入れていることはご存じの方も多いでしょう。
ヨガをするようになってから、怪我が減り、体調管理がうまくいっていると聞きます。
彼のチームメイトや、日本代表の仲間もこぞって長友式ヨガトレーニングを実践していることからも、その効果を疑う余地はないでしょう。
勝敗を分けるのは、フィジカルではなくメンタル
このように、一流アスリートの勝負の世界でもヨガは注目されています。
フィジカルの強さやテクニックなど、スキルも勿論大切でしょうが、一流のスポーツの世界でも、最後の最後で勝敗を分けるのはメンタルの強さなのです。
ヨガをすることでフィジカル面の強化だけでなく、強い精神力と集中力、さらには疲労から回復する力も身につきます。
アスリートの活躍の背景にヨガの効果が見出されるようになってから、ますます意識の高い男性がヨガを始めるようになってきています。