世界中をめぐる著者が、現地の健康情報を毎週お届けします。
飛ぶと意外に小さな世界ですが、軽自動車には十分に大きい地球です。
2016年の秋にアフリカ大陸に上陸して、はや半年以上。
ジャングルの雨期に追われ、相棒の軽自動車を貨物船に乗せました。
カメルーンからナミビアまで、およそひと月。その間、フランスでお盆休みです。
西アフリカの積もり積もったストレスを発散しつつ、栄養補給中。
やせ衰えたカラダを急速にメタボ化しています。
アフリカの食は、命がけ!
ヨーロッパのスーパーマーケットは、すっかりアフリカかぶれした筆者には、毎日が食の祭典です。
これぞ、グルメンピック。
彩り鮮やかな野菜や肉が目に眩しく、その値段に立ちくらみしています。
つい先日までは、炎天下にさらされたアフリカの市場。衛生観念ゼロの、あまりにもプリミティブなマーケット。
ハエに覆われた生肉や溶け始めたトマト、どこからともなく漂う酸っぱい香りと腐臭。ゆで卵?ってくらいに熱くなった生卵。
どこにでも売っているけれど、生で食べると危険な芋、シアン化合物入りキャッサバ。
食べねば死ぬが、食べたら死ぬかも。食との闘いに明け暮れたダンジョン化したアフリカにおいて、唯一の楽しみが、屋台の焼肉です。
初めてお目にかかったのは、モロッコ。
なんの肉?って訊くと、
「ラム」って答えるけれど、絶対にヤギ肉です。店先にぶら下がっているのは、ヤギですから。どういうわけか一部のアジアやアフリカでは、ヤギでもラムやマトンと呼びます。
粗末なコンクリート製の釜に薪を突っ込み、一片の愛情を込めずにぶった切りした肉の塊を炭火にかけ、じっくりと土埃にまみれながら、焼き上げたヤギ肉。
おシャレな沖縄では生で食べるかもしれませんが、こちらではウェルダン・ベリーマッチ。お焦げも味のうち。
何も足さない、何も引かない、清々しいまでの素材勝負。歯に挟まる大地の滋味です。
付け合わせは、適当に刻んだ生玉ねぎ。そして成分不明の茶色い粉。
それで一皿100円少々。世界を代表する貧困地域ですから、懐に優しいのです。
モロッコから先、しばらくこの手の焼肉はお目にかかれませんでしたが、コートジボワールで再会します。
キリスト教の台頭とともに住宅街にBarが出現し、呑んべいに愛されるビールのつまみなのです。
運が良ければ、カリッカリに焼けたレバーもあります。
ガーナで牛肉に出会い、ナイジェリアでは豚。
この豚の皮が厚くて硬くてしぶとくて、どんなに噛んでも噛みきれない頑固な奴。窒息覚悟で飲み込んだときの心意気。喉ちんこあたりでひっかかった絶望感。胃に到達したときの達成感。アフリカの食は、いつでも命がけです。
金持ちも貧乏人も、ペットはヤギ!
日本人には馴染みのないヤギですが、食肉生産量では世界6位。
どんなに粗末な餌でもすくすく育ち、崖のような険しい地形でも苦にせず、「貧農の乳牛」と呼ばれています。
貧乏ならヤギを飼え! です。
ヤギ肉は他の肉に比べて、カロリー、脂肪、タンパク質、コレステロールが少なく、肥満知らず。
鉄分が豊富で、吸収力に優れたヘム鉄が多いため、貧血気味の女性にオススメです。
ヤギの魅力は、肉だけではありません。
意外にいい乳をしています。
ヤギの乳は、人間の母乳の成分に似ていて栄養豊富。消化時間は、牛乳の4分の1。牛乳アレルギーなら、ぜひお試しください。
豊富なオリゴ糖が腸内細菌の成長を促し、悪玉菌を退治。お腹の調子を整えます。
肝臓に良いタウリンは牛乳の20倍も含まれ、アルコールの分解を早めてくれます。
良いことづくめのヤギですが、世界の侵略化外来種ワースト100のメンバーです。
樹皮や樹根まで、それこそ根こそぎ食べるので森林破壊を起こし、地球砂漠化の一因。
しかしゴミまで食べる食欲は、西アフリカでは町の掃除屋として活躍し、ゴミ漁りに忙しい毎日です。
植物繊維の紙ならば、喜んで食べます。
また、アメリカの国立墓地で雑草駆除として大活躍。
時給25円で雇われているそうです。
庭の広い豪邸にお住まいで、牛乳アレルギーのお酒好きの太った方は、ペットにヤギをオススメします。
デザイナー。1965年、北海道旭川市生まれ。札幌で育ち、東京で大人になる。出版社勤務、デザイン事務所、編集プロダクションなど複数の会社経営の後、2005年4月より建築家の妻と夫婦で世界一周中。生活費を稼ぎながら旅を続ける、ワーキング・パッカー。世界中の生の健康トレンド情報をビジネスライフで連載中。