「疲れやすい人の食事 いつも元気な人の食事」(著:柴崎真木)
「疲れたときに甘いもの」が低血糖症を招く
「イライラしやすい」「怒りっぽい」「気分が落ち込みやすい」「やる気が出ない」「気持ちが落ち着かない」「だるさが抜けない」などの症状は、誰でも多少はあると思います。
ですが、こういった症状は、コーヒーや紅茶に砂糖をたっぷり入れたり、砂糖の入った缶コーヒーやジュース類をよく飲んでいたりする人ほど起こりやすいのです。
甘いものをとると血糖値が急上昇し、それを下げるために大量のインスリンが分泌されます。このとき、血糖値が下がりすぎてしまうと、それを上げようとするホルモンが働き、このホルモンがイライラ感や落ち着きがない状態を引き起こします。このように、血糖値が下がりすぎる症状を低血糖症といいます
疲れたときは甘いものを食べたくなりますが、これは脳のエネルギーが不足している状態だからです。だからといって、その度に甘いものばかりを食べていると、血糖値の乱高下が起こり、低血糖症を引き起こしやすくなります。
仕事をしながら砂糖がたっぷり入った缶コーヒーや紅茶を飲んでいる人は、ブラックコーヒーやお茶、ミネラルウォーターを飲むようにしましょう。甘いものでなくても、よくやってしまいがちなのが、炭水化物の多い食べ物を単品でおなかいっぱい食べることです。これも急激な血糖値の低下を招きます。
また、仕事帰りの一杯のときにも注意が必要です。空腹時にアルコールを飲むことも低血糖を起こしやすくなりますので、枝豆や冷奴などのおつまみを食べながら飲むようにしましょう。ただし、脂肪の多いおつまみだと膵臓に負担がかかります。膵臓はインスリンだけでなく、脂肪を分解する消化液を分泌する組織でもあるため、同時に働かせると膵炎の原因にもなります。例えば、ビールにから揚げ、フライドポテト、ピザなどを組み合わせている人は要注意です。から揚げは焼鳥に、フライドポテトはポテトサラダや肉じゃがにするなど、脂肪の多いものばかりの組み合わせにならないようにするとよいでしょう。
若い女性に増えている耐糖能異常。予防するためにはどうすればよい?
イライラやだるさを頻繁に感じる人は、うつ病や不安障害慢性疲労症候群などの精神疾患がある場合があります。
こうした精神疾患は、環境、遺伝、心理的な要因などいくつかが複雑に関係していますが、生活習慣や食事も要因の1つだといわれています。生活習慣や食事が原因による疾患の1つに糖尿病がありますが、うつ病は糖尿病や糖尿病予備軍といわれる耐糖能異常(糖尿病と診断されるほどではないものの、正常値より血糖値が高い状態にあること)の人が多いともいわれます。
糖尿病というと太っている人がなるものだと思われやすいのですが、最近はやせている若い女性に耐糖能異常が増えてきているといいます。原因は1日の食事量が極端に少なく、炭水化物摂取量が不十分な状態が続くことだと考えられています。インスリン分泌量を低下させ、急激な糖の摂取に対応できなくなるのだと推測されているということです。
極端な糖質制限は、疲労感や気持ちの不安定さを招くだけでなく、糖尿病のリスクも高くなります。糖尿病は一度なってしまうと完全には治らない病気です。後悔することにならないよう、極端な食事制限は控え、ごはんやおかずをきちんととるべきです。
鉄不足がイライラを引き起こす
なんとなくだるさを感じたり、集中力が低下したりするのは、低血糖だけでなく、貧血の疑いもあります。
貧血とは、血液中のヘモグロビン濃度が低い状態のことで、男性は14g/dl未満、女性は12g/ dl未満を指します。ヘモグロビンは体内の組織に酸素を運搬する役割があり、不足すると体内が酸欠状態になり、頭痛や肩こり、めまい、だるさなどの症状が起こります。
健康診断で貧血といわれたことのない人も要注意です。ヘモグロビン値が低下するまでに、体内の貯蔵鉄であるフェリチンが最初に低下します。フェリチンが少なくなってからヘモグロビン値が低下するので、貧血と診断されたときにはかなり体内の鉄が不足した状態になっているのです。フェリチン値の低い人は、「隠れ貧血」ともいわれ、3人に2人の割合でなっているともいいます。九州の市役所職員を対象とした調査では、うつ病症状を持つ男性はフェリチン値が低い人が多かったといいます。
貧血の主な原因は鉄の摂取不足です。鉄が含まれる食品はレバーが有名ですが、他にもあさりや牡蠣、赤貝などの貝類や牛肉、まぐろ、かつおなど赤身の肉や魚類、ほうれんそうや小松菜、パセリなどの緑黄色野菜、ごま、きくらげ、海藻類などがあります。
鉄のサプリメントのとりすぎには要注意!
貧血予防に鉄のサプリメントをとろうとしている人は要注意!鉄は、摂取量が多ければよいというわけではありません。鉄はとりすぎると体内で活性酸素を発生させ、酸化ストレスを促進し、動脈硬化や糖尿病、癌などのリスクを高めます。疲労やイライラを感じやすい人は、まずは食品から鉄がとれるようにしましょう。
他にも、ハッピーホルモンといわれるセロトニンや葉酸、亜鉛、マグネシウム、ビタミンDなどの栄養素不足もうつ病症状に関連していることがわかってきています。セロトニンの材料になるトリプトファンが多く含まれるたんぱく質食品をとること、葉酸やマグネシウム、亜鉛を多く含む緑黄色野菜や海藻類をとることも大切です。
スナック菓子や加工食品をとりすぎると、亜鉛やマグネシウムなどミネラルの吸収を阻害してしまいます。加工食品を利用するときも、わかめ入りの味噌汁をとる、もずく酢やめかぶ、のりなど手軽にとれる海藻類、サラダやおひたしをプラスするようにしましょう。
イライラ予防に「甘いもの控えめ」「鉄を食品から摂取」を心がけよう!
いかがでしたか?間食などでも、甘いものを控えて、その代わりに鉄がとれる食品をとると、イライラの予防に役立ちそうですね。「甘いものを控える」「鉄を食品からとる」をしっかり意識して、イライラしない疲れにくい身体を目指しましょう。
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