新たに何かをはじめようと思ってもなかなか踏ん切りがつかない、こんなところで立ち止まっていられないことはわかっていても一歩を踏み出す勇気が湧かない。こういった経験をしたことは誰にでもあるのではないでしょうか。
その根底には、もしも失敗し、お金、時間、労力などの損失が生じてしまうのが怖いからという思いがあります。
企業経営でいえば、このタイミングで成長株の事業に投資すれば会社の業績は上向くだろうと感じていても、目先の数字が落ち込むことから投資に舵を切れないといったケースです。
オーナー社長ならある程度思い切って決断できますが、サラリーマン社長は自分の代で損失を出したくないので、次の代にバトンタッチするまで現状維持でやり過ごそうという気持ちがはたらくでしょう。
プライベートでいえば、将来を見据えて英会話を習おうと思っても、授業料の高さや仕事の忙しさを理由に二の足を踏んでしまうというようなことです。
「損して得取れ」ということわざがあります。
将来、大きな利益を得るためには、目先の小さな損に気を取られず、長い目でものごとを見よ、という意味です。
成功への呼び水として、はじめに損をしろということではありません。最初に使うお金、時間、労力はすべて、将来へ向けた生きた投資である、そう思えたら思い切って一歩を踏み出しなさい、ということです。
「損して“徳”取れ」
私はこの考えが社会に広がってほしいと思っています。「得」ではなく、功徳の「徳」です。自分のためばかりでなく、人のため社会のために積極的に取り組む姿勢がよい社会をつくっていくはずです。
迷って「ここぞ!」を逃してはいけない

新しいことに取り組むには相応のエネルギーやパワーが必要です。ですから、「ここぞ!」というタイミングが大切です。
自動車産業でいえば、新世代の主流になるのはEV(電気自動車)かFCV(燃料電池自動車)か、はたまたCNG(天然ガス自動車)か──。開発の方向性を見極めるタイミングに社運がかかっています。
私が住職をつとめる建功寺でも、本堂の建て替えのタイミングに苦慮しました。資金が貯まってからと思っても、物価が先にどんどん上がってしまえば、資金繰りが追いつかず、いつになっても建て替えられません。本堂は老朽化するいっぽうです。お檀家さんのお力添えも必要ですから、景気が悪いときよりも、社会全体が上向いている時期であることも大切です。
最後は、住職である私が「今しかない!」という時期を決断。なんとかよいタイミングを見計らうことができ、建て替えを無事に終えました。
「ここぞ!」のタイミングを見極めたら、あとは失敗を恐れず勇気を持って、ことに当たりましょう。明るく前向きに、夢を抱いて前進あるのみです。
「不動心(ふどうしん)」という禅語があります。何ごとにも揺れ動くことのない不動明王の精神を意味します。決断したら、多少の困難にぶち当たっても絶対に乗り越えてみせるという気迫でエネルギーを注ぎ込み、動き出すのです。
『迷ったら、ゆずってみるとうまくいく』
(著:枡野俊明/ますの・しゅんみょう)より
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