「一生太らない魔法の食欲鎮静術 食事瞑想のススメ」(著:松尾伊津香)より
「量で満腹」はダメ! 「味で満足」できる人になる
ダイエットのプロとして働きだしてからも終わることのなかった私のダイエット遍歴。
やっと終止符が打たれたのは 27歳の頃、田舎から上京してきた妹との食事がきっかけでした。
その日、家で一緒に朝ごはんを食べていると、妹が1本のソーセージを残し、ラップをかけて冷蔵庫に入れたのです。私は思わず、つぶやいていました。
「え、なんで残せるの?」
当時の私は、たとえお腹がいっぱいでも目の前のものを残せない、しまいには冷蔵庫の妹のソーセージすらも気になるという謎の食欲と戦っていました。
だから、彼女の何気ない行動が不思議でならなかったのです。
そして、妹の回答にまたびっくり。
「そういえば私、いつもお腹いっぱいは食べてないかも」
「お腹いっぱいまで食べる」が当たり前だった私にとって、食事をやめるラインが満腹感でないことは、かなりの衝撃でした。
彼女は「お腹いっぱい=幸せ」ではないことを知っていて、量ではなく味で、目の前の食事を楽しみ、満足していたのです。
● 満腹感…胃が量で満たされた感覚。お腹がいっぱいになったという感覚
● 満足感…精神的に満たされた感覚。心落ち着いたさま。お腹がいっぱいではないけれども「もういいや」と思える感覚
これが、私の思う「満腹感」と「満足感」の違いです。
ちなみに、「満腹」そのものの意味は、胃の中に極限まで入った状態のこと。
体の感覚ではなく、胃の状態を指します。
それまで私がやっていたのは、いわば「量で満腹になる」食べ方。
これではいくら食べても一向に満たされず、いずれ暴食に走ってしまいます。
そうならないためには、妹のような「味で満足する」食べ方に変える必要があったのです。
「本当の味わい方」を知らないから、 やせられない
リバウンドに悩むほとんどの方は、この「味で満足する」ができていません。
「え、私いつも味わってると思うけど」
「ちゃんと味わかって食べてるよ」
そう思うかもしれませんが、断言します。 はっきり言って、あなたはまったく味わっていません!
私たちが普段〝美味しい〟と思っている感覚は、風味による影響を強く受けているからです。
「風味」とは、味覚刺激に加えて、食べものの持つ嗅覚刺激、さらに辛み、渋み、食感や温度、のど越しを総合した食べ物の美味しさに関連した感覚のことです。
たとえば風邪で鼻がつまっていると、いつもより味を感じにくくなりますよね。
だから、あなたがいつも感じている「美味しさ」は、見た目や匂い、歯ごたえ、のど越しなどを総合した「美味しい」であって、味わって食べていると思っていても、それは見た目や匂いに騙されていることが多いのです。
「一度袋を開けたらなくなるまでやめられない」
「お腹いっぱいなのに何かほしくなる」
「ダイエット中なのに甘いものが頭から離れない」
こんなふうに食欲に振り回されてしまうのは、そもそも「本当の味わい方」を知らないから。「舌先で味わう」という感覚を知らないからです。
ところで、あなたは普段どこで味を感じていますか?
当然、「舌で」という回答が返ってくると思います。
でも、これは当っているようで間違っています。
舌には「味蕾(みらい)」という食べ物の味を感じる小さな器官が、およそ1万個敷き詰められています。
かつては、舌には領域があって、
舌先は「甘味」、
舌の横側は「酸味」と「塩味」、
舌の奥 (付け根) は「苦味」
というように、それぞれ特定の味しか感知しないという考え方が主流でした。
でも、この「味覚分布地図」という説はすでに否定されています。
一度、試しにやってみるとわかると思いますが、舌先だけで食べたとしても、甘味以外のすべての味覚をきちんと感じることができます。
それどころか、いつもよりはっきりと味を感じることができるはずです。
なぜなら舌先こそが、味覚を最も感じられる部分だからです。というのも、
舌先 (舌全体の3分の2) は、感覚器官が特に発達している部分。
味覚をより強く受け取れるところです。
むしろ、舌先でなければ味覚を感知しにくいことが分かっています。
私たちは「舌」という一つの大きな部分でとらえていますが、舌には3つの異なる神経が繋がっています。
● 舌先3分の2…味覚に特化した神経
● 舌奥3分の1…運動・知覚・味覚が混合された神経
● 付け根…飲み込みに関わる神経
舌先の神経が味覚に特化しているのに対し、舌奥の神経は運動や知覚にも通じているため、かえって味覚を感じにくくなってしまいます。
つまり、本当に食べ物を味わおうと思ったら、「舌全体」というよりも「舌先」で味わうことがポイントとなるのです。
舌先で味わい、味覚に最大限フォーカスしていく方法を覚えると、自分を客観視できるようになり、食欲が落ち着いていきます。
ひとくちで感じる美味しさと幸福感が格段に上がるので、お腹と同時に心も満たすことができます。
これが、前述した「量で満腹ではなく味で満足する食べ方」です。
量の多い少ないに関係なく目の前の食事に満足できるので、「食べ足りない!」とストレスを感じることも、イライラして食べすぎることもなくなります。
そればかりか、いつもの半分の量しか食べていないのに、2倍も3倍もおいしくなって、その分余計に食べる幸せを感じられるようになるはずです。
トレーナー任せでは、永遠にやせられない
最近、「1ヶ月で● キロ減!」などの劇的なヤセ効果を売りにしたダイエットサー ビスが流行っています。
派手に広告やテレビCMを打っているのでかなりインパクトがありますが、やっていることは厳しい食事制限とハードな運動です。
たしかに、やればやせます。
一時的には、その効果は絶大で、確実です。
でも、期限が終わり食事や運動習慣が戻れば、それはリバウンドの始まりです。
これは、ダイエットのプロであり、ダイエットオタクでもあるこの私が、身をもって感じていることです。本当に必要なのは、自分自身で食欲と向き合い、コントロールする力を養っていくことだからです。
「いつまでも美しく、きれいでありたい」
「スリムで健康的な体をキープしたい」
誰だって、本当はそう願っているはずなのに、
「そんなに簡単にいくはずがない」
と、どこかで思ってしまっているのではないでしょうか?
これまで何度も、いろんなダイエットに挑戦してきた。
けれど、どれも結局はうまくいかなかったのだから……。
でも、約束します。
「舌先で味わう食べ方」を知れば、誰にだって「無理なくやせて、一生太らない体になる」ことができます!
味覚に集中することで食欲を鎮静させ、食べ過ぎや間食をなくす。
この手法は、瞑想の感覚に似ています。
「ヨガ」や「メディテーション」などという言葉とともに最近認知度が上がってきてはいるものの、「なんだかよくわからない」「スピリチュアルはちょっと……」と敬遠する人もまだまだいらっしゃるかと思います。
瞑想とは、「客観視」を作り出すことで欲や情動を落ち着かせていく手法のこと。
たとえば怒りのままに拳を振り上げて相手を殴りそうになって、はっと我に返ったという経験はありませんか? 「今自分は怒っている」
と気づくことで自然と情動がおさまり、拳を振り下ろさず に済みます。
この感覚こそ、自分を落ち着かせるのに必要な客観視の視点です。
「第三者目線」ともいいます。
情動や欲望とは、自分の中に客観視が欠如することで生まれるものです。
私たちは、その情動や欲望に振り回されて行動に及びますが、
どんな感情も欲望も、客観視の視点を自分の中に育むことで鎮めることができます。
この視点を手っ取り早くつくり出すには、感覚器官一点に集中するのが一番。
瞑想では主に呼吸に集中することで、食事では味覚に集中することでこれを可能にします。
瞑想で高ぶっていた感情や雑念が鎮まり、
思考や感情がすっきりと整理されるのと同じように、
味覚を研ぎ澄ますことで食欲がおさまり、自然と腹八分が叶えられるようになるのです。
感情の波と「食べたい!」の衝動は似ています。
食欲もいわば波のようなもの。
その波を、あなたは毎回「制限」という方法で死ぬまで押さえつけていくのでしょうか?
そんなもの、あなたの人生の質を上げるダ イエットにはなりえません。
なにも食べることをやめる必要はないのです。
そうではなく、どんな状況でも食べ物に左右されずに食べることができたら、腹八分で食事がやめられ満たされたら、一生制限という状況からは解放されます。
『一生太らない魔法の食欲鎮静術 食事瞑想のススメ (Business Life)』 (クロスメディア・パブリッシング) |