仕事や日常生活で迷いや気になることがあると、心がざわつきます。イライラして、無意識のうちに人にキツくあたってしまうこともあります。
人間のおこないは、「身体」と「口」と「心」によって成り立っているからです。
心穏やかで生き生きと暮らすために、仏教では「身口意(しんくい)=身業(しんごう / 身体)・口業(くごう / 言葉)・意業(いごう / 心)」の三業(さんごう)を整えることがポイントであると教えます。
「身体を整える」とは、所作を正しくすることです。それは、当たり前のことを当たり前に、丁寧におこなうことです。
そのためにはまず、常にいい姿勢を意識することです。
「言葉を整える」とは、慈愛の心を持って言葉を発することです。
日本曹洞宗の開祖・道元禅師は、主著『正法眼蔵(しょうほうげんぞう)』のなかで「愛語(あいご)よく廻天の力あることを学すべきなり」と語っています。慈愛の心を持って語る「愛語」には、天地をひっくり返すほどの力がある、という意味です。
同じことを伝えるのであっても、相手の人柄、置かれている立場や心情を察して伝えると、自ずと愛語になるものです。
「心を整える」とは、しなやかな心を保つことです。禅語で「柔軟心(にゅうなんしん)」といいます。
それは、固定観念や先入観、思い込みといったものにとらわれない心の状態です。
身体と口と心は関連しています。所作を丁寧におこなうと、自ずと口から出てくる言葉は「愛語」となり、その結果、「柔軟心」を保って過ごすことができます。
所作と言葉、つまり、立ち居振る舞いを大切にすることが、心を整えるための最大のポイントです。また逆に、心が整っているときは、所作が丁寧になり、慈愛の心を持って語ることができるものです。
背筋を伸ばすして、腹式呼吸

心を整えるためには、まずは所作です。
その第一は、いい姿勢です。
難しいことではありません。胸を張るというというよりも、みぞおちを前に出すという感覚で背筋を伸ばし、腹式呼吸をするだけです。おなかから息を吐いて、吸った息をおなかに落とすのが腹式呼吸です。背中が丸まっていては腹式呼吸ができませんから、それを心がけるだけでもいい姿勢になるものです。
背筋を伸ばして腹式呼吸をしていると、不思議と落ち着いてきて、迷いや急いた気持ちが消えていきます。
じつは、腹式呼吸にはリラックス効果があることが医学的にも明らかになっています。腹式呼吸で取り込んだ酸素が脳まで行きわたると、副交感神経が優位にはたらいて身体の緊張がほぐれます。
また、副交感神経が優位な状態になると、リンパ球を増やして免疫力アップにもつながるそうです。
心がモヤモヤしているときは、まずはいい姿勢を心がけてください。心にゆとりが生まれ、相手の気持ちや感情に配慮できるようになります。それが言葉にもあらわれます。自分が語ろうとしている言葉を、相手がどう受け止めるかに思いを馳せられるようになるわけです。
『迷ったら、ゆずってみるとうまくいく』
(著:枡野俊明/ますの・しゅんみょう)より
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